真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。
💭ポイント
ある人が説く五十歳(※満年齢48~49歳)からの生き方。上達しない芸事は諦め、俗事から離れ、何事も深入りせずに無欲に過ごすのが理想だという。
🌙現代語対訳
ある人が言うには、「五十歳になるまでに、
ある人のいはく、「年五十になるまで、
名人になれなかった芸事は、あきらめるべきだ。
上手に至らざらん芸をば捨つべきなり。
一生懸命に練習したところで、先行きはない。
励み習ふべき行く末もなし。
年をとった人を、周りの人も笑えないし、
老人のことをば、人もえ笑はず。
多くの人と交際するのも、相応しくなくてみっともない。
衆に交はりたるも、あいなく見苦し。
だいたい、あらゆる世俗的な仕事をやめて、
おほかた、よろづのしわざは止めて、
のんびりとした暮らしこそが、見ていて好感が持てる。
暇あるこそ、めやすくあらまほしけれ。
世俗的なことに関わり続けて、生涯を終えるのは、
世俗のことに携りて、生涯を暮らずは、
愚かな人間だ。
下愚の人なり。
興味を引かれることがあっても、
ゆかしく思えんことは、
人に聞いたりして、その概要がわかったら、
学び聞くとも、その趣を知りなば、
深入りせずにやめるべきである。
おぼつかなからずして止むべし。
もちろん、何も望むことなく過ごすのが一番良いことだ」。
もとより、望むことなくして止まんは、第一のことなり」。
📚古文全文
ある人のいはく、「年五十になるまで、上手に至らざらん芸をば捨つべきなり。励み習ふべき行く末もなし。老人のことをば、人もえ笑はず。衆に交はりたるも、あいなく見苦し。おほかた、よろづのしわざは止めて、暇あるこそ、めやすくあらまほしけれ。世俗のことに携りて、生涯を暮らずは、下愚の人なり。ゆかしく思えんことは、学び聞くとも、その趣を知りなば、おぼつかなからずして止むべし。もとより、望むことなくして止まんは、第一のことなり」。