古文で読みたい

古典を読みたい人が、古典にアクセスするための本です

徒然草151|ある人のいはく、年五十になるまで、上手に至らざらん・・・

真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。

💭ポイント

ある人が説く五十歳(※満年齢48~49歳)からの生き方。上達しない芸事は諦め、俗事から離れ、何事も深入りせずに無欲に過ごすのが理想だという。

🌙現代語対訳

ある人が言うには、「五十歳になるまでに、

あるひとのいはく、「とし五十いそじになるまで、

名人になれなかった芸事は、あきらめるべきだ。

上手じやうずいたらざらんげいをばつべきなり。

一生懸命に練習したところで、先行きはない。

はげならふべきすゑもなし。

年をとった人を、周りの人も笑えないし、

老人らうじんのことをば、ひともえわらはず。

多くの人と交際するのも、相応しくなくてみっともない。

しゆうまじはりたるも、あいなく見苦みぐるし。

だいたい、あらゆる世俗的な仕事をやめて、

おほかた、よろづのしわざはめて、

のんびりとした暮らしこそが、見ていて好感が持てる。

いとまあるこそ、めやすくあらまほしけれ。

世俗的なことに関わり続けて、生涯を終えるのは、

世俗せぞくのことにたづさりて、生涯しやうがいらずは、

愚かな人間だ。

下愚げぐひとなり。

興味を引かれることがあっても、

ゆかしくおもえんことは、

人に聞いたりして、その概要がわかったら、

まなくとも、そのおもむきりなば、

深入りせずにやめるべきである。

おぼつかなからずしてむべし。

もちろん、何も望むことなく過ごすのが一番良いことだ」。

もとより、のぞむことなくしてまんは、第一だいいちのことなり」。

📚古文全文

あるひとのいはく、「とし五十いそじになるまで、上手じやうずいたらざらんげいをばつべきなり。はげならふべきすゑもなし。老人らうじんのことをば、ひともえわらはず。しゆうまじはりたるも、あいなく見苦みぐるし。おほかた、よろづのしわざはめて、いとまあるこそ、めやすくあらまほしけれ。世俗せぞくのことにたづさりて、生涯しやうがいらずは、下愚げぐひとなり。ゆかしくおもえんことは、まなくとも、そのおもむきりなば、おぼつかなからずしてむべし。もとより、のぞむことなくしてまんは、第一だいいちのことなり」。