真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。
💭ポイント
人が求める快楽は名誉・色欲・美味の三つだが、これらは根本的な迷いから生じる苦悩の元なので、求めない方が良い。
🌙現代語対訳
常に 嫌ったり 好んだりして、心が動かされるのは、
とこしなへに違順に使はるることは、
ひとえに苦と楽によるものです。
ひとへに苦楽のためなり。
「楽」というのは、好み愛することです。
楽といふは、好み愛することなり。
これを求めることは、止まる時がありません。
これを求むること、止む時なし。
楽を求める対象の、一つ目は名誉ですが、
楽欲する所、一つには名なり。
名誉には二種類あり、業績と学問芸術に対する栄誉です。
名に二種あり。行跡と才芸との誉れなり。
二つ目は色欲、三つ目は美食です。
二つには色欲、三つには味はひなり。
あらゆる願い事も、この三つに及ぶものはありません。
よろづの願ひ、この三つにはしかず。
これは、苦楽をあべこべに見てしまうから生じるもので、多くの苦悩があります。
これ、顛倒の相よりおこりて、そこばくの煩ひあり。
初めから求めないに越したことはありません。
求めざらんにはしかじ。
📚古文全文
とこしなへに違順に使はるることは、ひとへに苦楽のためなり。
楽といふは、好み愛することなり。これを求むること、止む時なし。楽欲する所、一つには名なり。名に二種あり。行跡と才芸との誉れなり。二つには色欲、三つには味はひなり。よろづの願ひ、この三つにはしかず。
これ、顛倒の相よりおこりて、そこばくの煩ひあり。求めざらんにはしかじ。