古文で読みたい

古典を読みたい人が、古典にアクセスするための本です

徒然草242|とこしなへに違順に使はるることは、ひとへに苦楽のためなり・・・

真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。

💭ポイント

人が求める快楽は名誉・色欲・美味の三つだが、これらは根本的な迷いから生じる苦悩の元なので、求めない方が良い。

🌙現代語対訳

常に 嫌ったり 好んだりして、心が動かされるのは、

とこしなへに違順ゐじゆん使つかはるることは、

ひとえに苦と楽によるものです。

ひとへに苦楽くらくのためなり。

 

「楽」というのは、好み愛することです。

らくといふは、このあいすることなり。

これを求めることは、止まる時がありません。

これをもとむること、ときなし。

楽を求める対象の、一つ目は名誉ですが、

楽欲げうよくするところひとつにはなり。

名誉には二種類あり、業績と学問芸術に対する栄誉です。

二種にしゆあり。行跡ぎやうせき才芸さいげいとのほまれなり。

二つ目は色欲、三つ目は美食です。

ふたつには色欲しきよくつにはあぢはひなり。

あらゆる願い事も、この三つに及ぶものはありません。

よろづのねがひ、このつにはしかず。

 

これは、苦楽をあべこべに見てしまうから生じるもので、多くの苦悩があります。

これ、顛倒てんだうさうよりおこりて、そこばくのわずらひあり。

初めから求めないに越したことはありません。

もとめざらんにはしかじ。

📚古文全文

とこしなへに違順ゐじゆん使つかはるることは、ひとへに苦楽くらくのためなり。
らくといふは、このあいすることなり。これをもとむること、ときなし。楽欲げうよくするところひとつにはなり。二種にしゆあり。行跡ぎやうせき才芸さいげいとのほまれなり。ふたつには色欲しきよくつにはあぢはひなり。よろづのねがひ、このつにはしかず。
これ、顛倒てんだうさうよりおこりて、そこばくのわずらひあり。もとめざらんにはしかじ。