古文で読みたい

古典を読みたい人が、古典にアクセスするための本です

方丈記01|行く川の流れは絶えずして

真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたいシリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。

💭ポイント

川の流れや水の泡を例に、人も住まいも常に移ろいゆくものであるという無常観を説く。華やかな都でさえ例外ではなく、全ては儚いという本作の主題が示される。

🌙現代語対訳

流れていく川の流れは絶えませんが、それでいて元の水ではありません。

()(かは)のながれは()えずして、しかも(もと)(みづ)にあらず。

よどんでいる所に浮かぶ水の泡は、

よどみに(うか)ぶうたかたは、

あるものは消え、あるものはでき、長くとどまっていることはないのです。

かつ()えかつ(むす)びて(ひさ)しくとゞまることなし。

この世に生きる人とその住まいも、またこれと同じようなものです。

()(なか)にある(ひと)とすみかと、またかくの(ごと)し。

立派な都の中で、家が棟を並べ屋根を競い合っています。

(たま)しきの(みやこ)(うち)にむねをならべいらかをあらそへる、

身分の高い人から低い人まで、住まいは、代々受け継がれて尽きることはないように見えますが、

たかきいやしき(ひと)のすまひは、代々(よよ)()()きせぬものなれど、

これが本当かと聞いてみると、昔からあった家は少ないのです。

これをまことかと(たづ)ぬれば、(むかし)ありし(いへ)はまれなり。

ある家は去年焼けて今年は建てられ、

(あるひ)はこぞ()れてことしは(つく)り、

またある大きな家はなくなって小さな家になっています。

あるは(おほ)(いへ)ほろびて()(いへ)となる。

住んでいる人も、これと同じです。

()(ひと)もこれにおなじ。

場所は同じで、人も大勢いますが、

(ところ)もかはらず、(ひと)(おほ)かれど、

昔に見知った人は、二、三十人のうちでほんの一人か二人くらいしかいません。

いにしへ()(ひと)は、()(さん)(じふ)(にん)(なか)に、わづかにひとりふたりなり。

朝に亡くなり、夕方には生まれるという世の習いは、

あしたに()し、ゆふべに(うま)るゝならひ、

まさしく水の泡のようなものです。

たゞ(みづ)(あわ)にぞ()たりける。

📚古文全文

()(かは)のながれは()えずして、しかも(もと)(みづ)にあらず。よどみ((うか)ぶうたかたは、かつ()えかつ(むす)びて(ひさ)しくとゞまることなし。()(なか)にある(ひと)とすみかと、またかくの(ごと)し。(たま)しきの(みやこ)(うち)にむねをならべいらかをあらそへる、たかきいやしき(ひと)のすまひは、代々(よよ)()()きせぬものなれど、これをまことかと(たづ)ぬれば、(むかし)ありし(いへ)はまれなり。(あるひ)はこぞ()れてことしは(つく)り、あるは(おほ)(いへ)ほろびて()(いへ)となる。()(ひと)もこれにおなじ。(ところ)もかはらず、(ひと)(おほ)かれど、いにしへ()(ひと)は、()(さん)(じふ)(にん)(なか)に、わづかにひとりふたりなり。あしたに()し、ゆふべに(うま)るゝならひ、たゞ(みづ)(あわ)にぞ()たりける。

【出典および補足】

原文方丈記 (國文大觀) 作者:鴨長明 建曆二年(1212年)
  出典:ウィキソースhttps://ja.wikisource.org/wiki/方丈記 (國文大觀)

挿絵方丈記絵巻(三康文化研究所附属三康図書館所蔵)
  出典: 国書データベース,https://doi.org/10.20730/100449058

現代語訳:ざっくり研究所 都築輝繁 (2025年)
・この章の区切りとタイトルは、内容に応じて独自に設定しました。
・一行ごとの対訳、ふりがなは、読解の助けとなるよう独自に設定したものです。