真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。
💭ポイント
人生に不可欠なものは衣食住と医療の四つであり、それ以上を求めるのは驕りである。この四つを倹約すれば十分に満ち足りるという、兼好法師の質素な暮らしへの勧め。

🌙現代語対訳
役に立たないことをして時間を過ごす人を、
無益のことをなして時を移すを、
愚かな人、あるいは誤りを犯す人と言うべきです。
愚かなる人とも、僻事する人とも言ふべし。
国のため、天皇のために、どうしても、やらなければならないことが多く、
国のため、君のために、止むことを得ずして、なすべきこと多し。
余りの時間は、いくらもありません。
その余りの暇、いくばくならず。
よく考えるべきです。人間としてどうしても必要なことは、
思ふべし、人の身に止むことを得ずして営む所、
第一に食べ物、第二に着る物、第三に住む場所です。
第一に食ふ物、第二に着る物、第三に居る所なり。
人間の大事なことは、この三つ以上のものはありません。
人間の大事、この三つには過ぎず。
飢えることなく、凍えることなく、雨風に打たれることもなく、
飢ゑず、寒からず、風雨に侵されずして、
穏やかに過ごす生活を楽しむべきです。
閑かに過ぐすを楽しみとす。
ただし、人間は誰でも病気になります。
ただし、人、みな病あり。
病気にかかってしまえば、その苦しみは耐えがたいものです。
病に冒されぬれば、その愁へ忍びがたし。
健康管理を忘れてはなりません。
医療を忘るべからず。
薬を加えた四つ(衣食住薬)が満たされない状態は「貧しい」と言えます。
薬を加へて、四つのこと求め得ざるを貧しとす。
この四つが、満たされる状態は「裕福」と言えます。
この四つ、欠けざるを富めりとす。
そして、この四つ以上を求めようとすることは「贅沢」と言えます。
この四つのほかを求め営むを驕りとす。
四つのことがつつましく満たされれば、誰が不十分だと思うでしょうか。
四つのこと倹約ならば、誰の人か足らずとせん。
📚古文全文
無益のことをなして時を移すを、愚かなる人とも、僻事する人とも言ふべし。国のため、君のために、止むことを得ずして、なすべきこと多し。その余りの暇、いくばくならず。
思ふべし、人の身に止むことを得ずして営む所、第一に食ふ物、第二に着る物、第三に居る所なり。人間の大事、この三つには過ぎず。飢ゑず、寒からず、風雨に侵されずして、閑かに過ぐすを楽しみとす。ただし、人、みな病あり。病に冒されぬれば、その愁へ忍びがたし。医療を忘るべからず。
薬を加へて、四つのこと求め得ざるを貧しとす。この四つ、欠けざるを富めりとす。この四つのほかを求め営むを驕りとす。四つのこと倹約ならば、誰の人か足らずとせん。