真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。
💭ポイント
春の夕暮れ、趣のある家で書物を広げている気品ある若者を見かけ、その人が誰なのかと心惹かれる。

🌙現代語対訳
春の夕暮れ、空が穏やかで美しく色づいている頃、
春の暮れつかた、のどやかに艶なる空に、
品のある家が、奥まったところにあり、木々は古びた趣で、
いやしからぬ家の、奥深く、木立もの古りて、
庭に散りしおれた花があり、見過ごすことができなかったので、
庭に散りしをれたる花見過ぐしがたきを、
そっと足を踏み入れてみると、南向きの格子戸はすべて下ろしていて、
さし入りて見れば、南面の格子みな下して、
静まり返った中、東向きの妻戸(両開きの扉)がいい感じに開いていました。
さびしげなるに、東に向きて、妻戸のよきほどに開きたる、
すだれの破れ目から中を覗いてみると、
御簾の破れより見れば、
姿かたちの清らかな男性で、年齢は二十歳くらいで、
形清げなる男の、年二十ばかりにて、
くつろいでいるが、奥ゆかしく、穏やかな様子で、
うちとけたれど、心にくく、のどやかなるさまして、
机の上に書物を広げて、読んでいました。
机の上に文を繰り広げて、見居たり。
どのような人だったのでしょうか。行って聞きたいものです。
いかなる人なりけん。尋ね聞かまほし。
📚古文全文
春の暮れつかた、のどやかに艶なる空に、いやしからぬ家の、奥深く、木立もの古りて、庭に散りしをれたる花見過ぐしがたきを、さし入りて見れば、南面の格子みな下して、さびしげなるに、東に向きて、妻戸のよきほどに開きたる、御簾の破れより見れば、形清げなる男の、年二十ばかりにて、うちとけたれど、心にくく、のどやかなるさまして、机の上に文を繰り広げて、見居たり。
いかなる人なりけん。尋ね聞かまほし。