古文で読みたい

古典を読みたい人が、古典にアクセスするための本です

徒然草015|いづくにもあれ、しばし旅立ちたるこそ・・・

真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。

💭ポイント

どこへ行くにしても旅は気分を一新させ、目にするもの全てが新鮮に映る。旅先では自然と心遣いが生まれ、人も物も普段より魅力的に見える。

徒然草絵抄』(小泉吉永所蔵) 出典: 国書データベース

🌙現代語対訳

どこへ行くのでもよいのですが、少しの間でも旅に出てみると、

いづくにもあれ、しばし旅立たびだちたるこそ、

目が覚めるような気持ちがするものです。

目覚めざむる心地ここちすれ。

旅先ではそのあたりをあちこちと見て歩きます。

そのわたり、ここかしこ見歩みありき。

田舎びた土地や山里などでは、

田舎いなかびたるところ山里やまざとなどは、

見慣れない珍しいことばかりです。

いと目慣めなれぬことのみぞおおかる。

都へ帰る人を見つけては手紙を頼み、

みやこ便たよもとめてふみやる。

「あれとこれを、忘れないで、ちゃんとやること」

「そのこと、かのこと、便宜びんぎに、わするな」

などと書き送るのも、また楽しいものです。

などひやるこそをかしけれ。

そういった旅先にいると、いろいろなことに対して気配りができるようになります。

さやうのところにてこそ、よろづにこころづかひせらるれ。

持っている道具でさえ良いものは一層すばらしく見え、

てる調度ちょうどまで、よきはよく、

才能のある人や容姿の美しい人も、普段よりずっと魅力的に見えるものです。

のうあるひとかたちよきひとも、つねよりはをかしとこそゆれ。

また、お寺や神社に人目を忍んで静かに滞在してみるのも、趣があります。

てらやしろなどに、しのびてこもりたるもをかし。

📚古文全文

いづくにもあれ、しばし旅立たびだちたるこそ、目覚めざむる心地ここちすれ。
そのわたり、ここかしこ見歩みありき。田舎いなかびたるところ山里やまざとなどは、いと目慣めなれぬことのみぞおおかる。みやこ便たよもとめてふみやる。「そのこと、かのこと、便宜びんぎに、わするな」などひやるこそをかしけれ。
さやうのところにてこそ、よろづにこころづかひせらるれ。てる調度ちょうどまで、よきはよく、のうあるひとかたちよきひとも、つねよりはをかしとこそゆれ。
てらやしろなどに、しのびてこもりたるもをかし。