真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。
💭ポイント
昔は風流だった祭りの放免の飾り物が、近年は贅沢になりすぎて見苦しいと、老人が嘆いている様子。

🌙現代語対訳
「建治(1275-)・弘安(1278-1288)のころは、お祭りの日の放免(検非違使庁の雑役係)が身につける飾りに、
建治・弘安のころは、祭の日の放免の付け物に、
趣向を凝らした紺色の布五反(60m程度)で馬の形を作り、
異様なる紺の布の五反にて、馬をつくりて、
尻尾とたてがみには灯心を使い、蜘蛛の巣を描いた水干(※狩衣に似た服)に取り付けていた。
尾髪には灯心をして、蜘蛛の網描きたる水干に付けて、
その飾りにちなんだ和歌の意味などを口ずさみながら歩いたものだ。
歌の心など言ひて渡りしこと、
よく見かけたものだったが、
つねに見及び侍りしなども、
いかにも風流で趣深く感じられたものだった」と、
興ありてしたる心地にてこそ侍りしか」と、
高齢の道志(検非違使庁の法務事務官)たちが、今でも語っています。
老いたる道志どもの、今日も語り侍るなり。
最近の、飾り物は、年を追うごとに、
このごろは、付け物、年を送りて、
贅沢が行き過ぎになって、いろいろ重たい物をたくさん付けて、
過差ことのほかになりて、よろづの重き物を多く付けて、
左右の袖を人に持たせ、自分では鉾さえ持たず、
左右の袖を人に持たせて、みづからは鉾をだに持たず、
苦しそうに息を切らしている有様は、まったく見苦しいものです。
息つき苦しむありさま、いと見苦し。
📚古文全文
建治・弘安のころは、祭の日の放免の付け物に、異様なる紺の布の五反にて、馬を つくりて、尾髪には灯心をして、蜘蛛の網描きたる水干に付けて、歌の心など言ひて渡りしこと、つねに見及び侍りしなども、興ありてしたる心地にてこそ侍りしか」と、老いたる道志どもの、今日も語り侍るなり。
このごろは、付け物、年を送りて、過差ことのほかに なりて、よろづの重き物を多く付けて、左右の袖を人に持たせて、みづからは鉾をだに持たず、息つき苦しむありさま、いと見苦し。