真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。
💭ポイント
北条時頼が足利義氏の屋敷を訪れた際の逸話です。質素なもてなしと、時頼が染め物を催促し、義氏がそれに応えるという、当時の武家の気風がうかがえます。

🌙現代語対訳
最明寺入道(北条時頼)が、鶴岡八幡宮へ参拝したそのついでに、
最明寺入道、鶴岡の社参のついでに、
足利左馬入道(足利義氏)の屋敷に、まず使いを先にやってから、
足利左馬入道のもとへ、まづ使を遣はして、
立ち寄られました。
立ち入られたりけるに、
主人が用意したおもてなしは、最初の献杯には打ち鮑、
あるじまうけられたりけるやう、一献に打ち鮑、
二の杯には海老、三の杯は、かいもちひ(蕎麦がき、ぼたもち等)で終わりでした。
二献に蝦、三献にかいもちひにてやみぬ。
その席には、主人の足利夫妻と、隆弁僧正が、
その座には、亭主夫婦、隆弁僧正、
主人側で座っておられました。
あるじ方の人にて座せられけり。
そして、入道殿は「毎年いただいている足利特産の染物が、気になっています」
さて、「年ごとに給る足利の染物、心もとなく候ふ」
と申しますと、主人は「用意しております」と答え、
と申されければ、「用意し候ふ」とて、
色とりどりの染め物三十疋(60着分)を、その場で、女房たちに小袖に
色々の染物三十、前にて、女房どもに小袖に
仕立てさせて、後ほどお届けになりました。
調ぜさせて、後に遣はされけり。
その場に居合わせていた人で、最近までご存命だった方が、語ったことです。
その時見たる人の、近くまで侍りしが、語り侍りしなり。
📚古文全文
最明寺入道、鶴岡の社参のついでに、足利左馬入道のもとへ、まづ使を遣はして、立ち入られたりけるに、あるじまうけられたりけるやう、一献に打ち鮑、二献に蝦、三献にかいもちひにてやみぬ。その座には、亭主夫婦、隆弁僧正、あるじ方の人にて座せられけり。
さて、「年ごとに給る足利の染物、心もとなく候ふ」と申されければ、「用意し候ふ」とて、色々の染物三十、前にて、女房どもに小袖に調ぜさせて、後に遣はされけり。
その時見たる人の、近くまで侍りしが、語り侍りしなり。