古文で読みたい

古典を読みたい人が、古典にアクセスするための本です

徒然草208|経文などの紐を結ふに、上下よりたすきにちがへて、二筋の中より・・・

真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。

💭ポイント

高僧である弘舜僧正は、経文の紐の結び方一つにも、古来の簡素で美しい作法があることを教える。流行の結び方を「見苦しい」とし、古き良き伝統を重んじた。

🌙現代語対訳

お経の巻物などの紐を結ぶ時、

経文きょうもんなどのひもふに、

上下から斜めに交差させて、二本の紐の間から、

上下かみしもよりたすきにちがへて、二筋ふたすぢなかより、

輪になった先端を横向きに引き出すのが、一般的なやり方です。

わなのかしらよこざまにだすことは、つねのことなり。

そのように結んであるのを見ると、華厳院の弘舜僧正は、

さやうにしたるをば、華厳院けごんいん弘舜こうしゅん僧正そうじょう

解いて直させたそうです。

きてなおさせけり。

「その結び方は、最近になって流行りだしたやり方だ。見苦しい。

「これは、このごろやうのことなり。いとにくし。

美しい結び方は、ただ、紐をくるくると巻いて、

うるはしくは、ただ、くるくるときて、

上から下へ、輪の先端を差し挟むのだ」とおっしゃった。

かみよりしもへ、わなのさきをさしはさむべし」ともうされけり。

昔の人で、

ふるひとにて、

このような作法にも通じた人でした。

かやうのことれるひとになんはべりける。

📚古文全文

経文きょうもんなどのひもふに、上下かみしもよりたすきにちがへて、二筋ふたすぢなかより、わなのかしらよこざまにだすことは、つねのことなり。
さやうにしたるをば、華厳院けごんいん弘舜こうしゅん僧正そうじょうきてなおさせけり。「これは、このごろやうのことなり。いとにくし。うるはしくは、ただ、くるくるときて、かみよりしもへ、わなのさきをさしはさむべし」ともうされけり。
ふるひとにて、かやうのことれるひとになんはべりける。