真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。
💭ポイント
「神無月」に神事を避けるべきという説や、神々が伊勢に集うという説には根拠がないと、当時の俗説を冷静に考察しています。
🌙現代語対訳
十月を神無月と呼んで、神道の行事を避けなければならないと、
十月を神無月と言ひて、神事にはばかるべきよしは、
書き記した書物はありません。
記したるものなし。
根拠となる文献も見当たりません。
本文も見えず。
ただ、この月は、多くの神社で祭りがないことから、そう呼ばれるのでしょうか。
ただし、当月、諸社のまつりなきゆゑに、この名あるか。
「この月には、日本中の神々が、伊勢神宮へお集まりになる」
「この月、よろづの神たち、太神宮へ集まり給ふ」
などという説もありますが、その根拠はありません。
など言ふ説あれども、その本説なし。
もしそうならば、伊勢では、特別な祭りの月とすべきでしょうが、
さることならば、伊勢には、ことに祭月とすべきに、
そのような例もありません。
その例もなし。
十月に、天皇が多くの神社を訪れたという記録は、たくさんあります。
十月、諸社の行幸、その例も多し。
しかし、その多くは不吉なものでした。
ただし、多くは不吉の例なり。
📚古文全文
十月を神無月と言ひて、神事にはばかるべきよしは、記したるものなし。本文も見えず。ただし、当月、諸社のまつりなきゆゑに、この名あるか。「この月、よろづの神たち、太神宮へ集まり給ふ」など言ふ説あれども、その本説なし。さることならば、伊勢には、ことに祭月とすべきに、その例もなし。十月、諸社の行幸、その例も多し。ただし、多くは不吉の例なり。