古文で読みたい

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徒然草196|東大寺の神輿、東寺の若宮より帰座の時、源氏の公卿参られけるに・・・

真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。

💭ポイント

神社の前での先払いを咎められた久我内大臣が、故実を引いて正当性を語る。彼の深い学識を示す逸話である。

徒然草絵抄』(小泉吉永所蔵) 出典: 国書データベース

🌙現代語対訳

東大寺の神輿(みこし)が、東寺の若宮という場所からお帰りになる時、

東大寺とうだいじ神輿しんよ東寺とうじ若宮わかみやより帰座きざとき

源氏の公卿の方々がお供をしていました。

源氏げんじ公卿くぎやうまゐられけるに、

例の内大臣殿が、大将として行列の先導をし、道を開けさせていました。

この殿との大将たいしようにてさきはれけるを、

土御門相国という方が、「神社の前で先払いをなさるのは、いかがなものでしょうか」と申し上げたところ、

土御門相国つちみかどしやうこく、「社頭しやとうにて警蹕けいひつ、いかがはんべるべからん」とまうされければ、

「お供の者の振る舞いについては、武家の者が判断することでございます」とだけお答えになりました。

随身ずいじん振舞ふるまひは、兵仗ひやうぢやういへることにさうらふ」とばかりこたたまひけり。

 

 

さて、後になって内大臣殿が仰ったことには、

さて、のちおほせられけるは、

「あの相国は、北山抄(藤原公任による儀式書)は読んだろうが、西宮記源高明による有職故実・儀式書)の説は知らなかったようだ。

「この相国しやうこく北山抄ほくざんせうて、西宮さいきゆうせつをこそられざりけれ。

神様に従う悪鬼や悪神を恐れるからこそ、

眷属けんぞく悪鬼あくき悪神あくじんおそるるゆゑに、

神社では、特に丁重に先払いをするべき理由があるのだ」ということであった。

神社じんじやにて、ことにさきふべきことわりあり」とぞ、おほせられける。

📚古文全文

東大寺とうだいじ神輿しんよ東寺とうじ若宮わかみやより帰座きざとき源氏げんじ公卿くぎやうまゐられけるに、この殿との大将たいしようにてさきはれけるを、土御門相国つちみかどしやうこく、「社頭しやとうにて警蹕けいひつ、いかがはんべるべからん」とまうされければ、「随身ずいじん振舞ふるまひは、兵仗ひやうぢやういへることにさうらふ」とばかりこたたまひけり。
さて、のちおほせられけるは、「この相国しやうこく北山抄ほくざんせうて、西宮さいきゆうせつをこそられざりけれ。眷属けんぞく悪鬼あくき悪神あくじんおそるるゆゑに、神社じんじやにて、ことにさきふべきことわりあり」とぞ、おほせられける。