真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。
💭ポイント
神社の前での先払いを咎められた久我内大臣が、故実を引いて正当性を語る。彼の深い学識を示す逸話である。

🌙現代語対訳
東大寺の神輿(みこし)が、東寺の若宮という場所からお帰りになる時、
東大寺の神輿、東寺の若宮より帰座の時、
源氏の公卿の方々がお供をしていました。
源氏の公卿参られけるに、
例の内大臣殿が、大将として行列の先導をし、道を開けさせていました。
この殿、大将にて先を追はれけるを、
土御門相国という方が、「神社の前で先払いをなさるのは、いかがなものでしょうか」と申し上げたところ、
土御門相国、「社頭にて警蹕、いかが侍るべからん」と申されければ、
「お供の者の振る舞いについては、武家の者が判断することでございます」とだけお答えになりました。
「随身の振舞ひは、兵仗の家が知ることに候ふ」とばかり答へ給ひけり。
さて、後になって内大臣殿が仰ったことには、
さて、後に仰せられけるは、
「あの相国は、北山抄(藤原公任による儀式書)は読んだろうが、西宮記(源高明による有職故実・儀式書)の説は知らなかったようだ。
「この相国、北山抄を見て、西宮の説をこそ知られざりけれ。
神様に従う悪鬼や悪神を恐れるからこそ、
眷属の悪鬼・悪神を恐るるゆゑに、
神社では、特に丁重に先払いをするべき理由があるのだ」ということであった。
神社にて、ことに先を追ふべきことわりあり」とぞ、仰せられける。
📚古文全文
東大寺の神輿、東寺の若宮より帰座の時、源氏の公卿参られけるに、この殿、大将にて先を追はれけるを、土御門相国、「社頭にて警蹕、いかが侍るべからん」と申されければ、「随身の振舞ひは、兵仗の家が知ることに候ふ」とばかり答へ給ひけり。
さて、後に仰せられけるは、「この相国、北山抄を見て、西宮の説をこそ知られざりけれ。眷属の悪鬼・悪神を恐るるゆゑに、神社にて、ことに先を追ふべきことわりあり」とぞ、仰せられける。