古文で読みたい

古典を読みたい人が、古典にアクセスするための本です

徒然草195|ある人、久我縄手を通りけるに、小袖に大口着たる人、木造りの地蔵を・・・

真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。

💭ポイント

ある人が高貴な久我内大臣が田の水で地蔵を洗う奇行を目撃する。普段は立派な人だという、不思議な逸話。

徒然草絵抄』(小泉吉永所蔵) 出典: 国書データベース

🌙現代語対訳

ある人が、久我縄手という道を通っていると、

あるひと久我縄手こがなはてとほりけるに、

小袖という着物に、大口という袴を着た人が、

小袖こそで大口おほくちたるひと

木で作られたお地蔵様を田んぼの水に浸して、

木造こづくりりの地蔵ぢざうなかみづにおしひたして、

熱心に洗っていました。

ねんごろにあらひけり。

 

 

不思議に思って見ていると、

心得こころえがたくるほどに、

狩衣を着た男が二、三人やって来て、

狩衣かりぎぬをとこふたたりて、

「こちらにいらっしゃいましたか」と言うと、

「ここにおはしましけり」とて、

この人を連れて去って行きました。

このひとしてにけり。

久我の内大臣という高貴な方だったのでした。

久我内大臣殿こがのないだいじんどのにてぞおはしける。

 

 

普通の状態でいらっしゃる時は、

尋常よのつねにおはしましけるときは、

穏やかで素晴らしい方なのだそうです。

神妙しんべうにやんごとなきひとにておはしけり。

📚古文全文

あるひと久我縄手こがなはてとほりけるに、小袖こそで大口おほくちたるひと木造こづくりりの地蔵ぢざうなかみづにおしひたして、ねんごろにあらひけり。
心得こころえがたくるほどに、狩衣かりぎぬをとこふたたりて、「ここにおはしましけり」とて、このひとしてにけり。久我内大臣殿こがのないだいじんどのにてぞおはしける。
尋常よのつねにおはしましけるときは、神妙しんべうにやんごとなきひとにておはしけり。