古文で読みたい

古典を読みたい人が、古典にアクセスするための本です

徒然草189|今日はそのことをなさんと思へど、あらぬ急ぎまづ出で来てまぎれ暮らし・・・

真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。

💭ポイント

人生は計画通りにいかない。予定は狂い、予期せぬことが起こる。「万事は不確かだ」と知ることだけが、唯一確かな真実である。

 

🌙現代語対訳

「今日は、あのことをやろう」と思っても、

今日けふはそのことをなさん」とおもへど、

予期せぬ急用ができて、紛れて一日を過ごし、

あらぬいそぎまづてまぎれらし、

待っている人は差し障りができて来なかったり、

ひとはさはりありて、

あてにしていない人はやって来たりします。

たのめぬひとたり。

当てにしていたことはうまくいかず、

たのみたるかたのことはたがひて、

思いもよらなかったことだけが叶います。

おもひよらぬみちばかりはかなひぬ。

面倒だと思っていたことは案外あっさり片付き、

わづらはしかりつることはことなくて、

簡単だろうと思っていたことが、ひどく骨の折れることになります。

やすかるべきことはいと心苦こころぐるし。

毎日が過ぎていく様子は、前もって考えていたようにはなりません。

日々ひびくさま、かねておもひつるにはず。

一年という期間もこれと同じです。

一年ひととせうちもかくのごとし。

そして、一生という間もまた、そうなのです。

一生いっしゃうかんもまたしかなり。

『事前の計画はすべて狂ってしまうものなのか』と思っていると、

「かねてのあらまし、みなたがくか」とおもふに、

自然と計画通りにいくこともあるので、

おのづからたがはぬこともあれば、

ますます物事は予測しがたくなります。

いよいよものさだめがたし。

万事、すべては不確かであると納得することだけが、

不定ふぢやう心得こころえぬるのみ、

確かな真実です。

まことにてたがはず。

📚古文全文

今日けふはそのことをなさん」とおもへど、あらぬいそぎまづてまぎれらし、ひとはさはりありて、たのめぬひとたり。たのみたるかたのことはたがひて、おもひよらぬみちばかりはかなひぬ。わづらはしかりつることはことなくて、やすかるべきことはいと心苦こころぐるし。
日々ひびくさま、かねておもひつるにはず。一年ひととせうちもかくのごとし。一生いっしゃうかんもまたしかなり。
「かねてのあらまし、みなたがくか」とおもふに、おのづからたがはぬこともあれば、いよいよものさだめがたし。不定ふぢやう心得こころえぬるのみ、まことにてたがはず。