真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。
💭ポイント
人生は計画通りにいかない。予定は狂い、予期せぬことが起こる。「万事は不確かだ」と知ることだけが、唯一確かな真実である。
🌙現代語対訳
「今日は、あのことをやろう」と思っても、
「今日はそのことをなさん」と思へど、
予期せぬ急用ができて、紛れて一日を過ごし、
あらぬ急ぎまづ出で来てまぎれ暮らし、
待っている人は差し障りができて来なかったり、
待つ人はさはりありて、
あてにしていない人はやって来たりします。
頼めぬ人は来たり。
当てにしていたことはうまくいかず、
頼みたる方のことは違ひて、
思いもよらなかったことだけが叶います。
思ひよらぬ道ばかりはかなひぬ。
面倒だと思っていたことは案外あっさり片付き、
煩はしかりつることはことなくて、
簡単だろうと思っていたことが、ひどく骨の折れることになります。
やすかるべきことはいと心苦し。
毎日が過ぎていく様子は、前もって考えていたようにはなりません。
日々に過ぎ行くさま、かねて思ひつるには似ず。
一年という期間もこれと同じです。
一年の中もかくのごとし。
そして、一生という間もまた、そうなのです。
一生の間もまたしかなり。
『事前の計画はすべて狂ってしまうものなのか』と思っていると、
「かねてのあらまし、みな違ひ行くか」と思ふに、
自然と計画通りにいくこともあるので、
おのづから違はぬこともあれば、
ますます物事は予測しがたくなります。
いよいよ物は定めがたし。
万事、すべては不確かであると納得することだけが、
不定と心得ぬるのみ、
確かな真実です。
まことにて違はず。
📚古文全文
「今日はそのことをなさん」と思へど、あらぬ急ぎまづ出で来てまぎれ暮らし、待つ人はさはりありて、頼めぬ人は来たり。頼みたる方のことは違ひて、思ひよらぬ道ばかりはかなひぬ。煩はしかりつることはことなくて、やすかるべきことはいと心苦し。
日々に過ぎ行くさま、かねて思ひつるには似ず。一年の中もかくのごとし。一生の間もまたしかなり。
「かねてのあらまし、みな違ひ行くか」と思ふに、おのづから違はぬこともあれば、いよいよ物は定めがたし。不定と心得ぬるのみ、まことにて違はず。