真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。
💭ポイント
馬術の達人・安達泰盛は、敷居の越え方で馬の良し悪しを見抜いた。達人ならではの慧眼を示す逸話である。

🌙現代語対訳
城陸奥守泰盛は、
並ぶ者のいない馬術の達人でした。
さうなき馬乗りなりけり。
馬を引き出させた時、
馬を引き出ださせけるに、
両足を揃えて、敷居をゆったりと優雅に越えるのを見ると、
足を揃へて閾をゆらりと越ゆるを見ては、
「これは元気で勇敢な馬だ」と言って、
「これは勇める馬なり」とて、
鞍を置き替えさせました。
鞍を置き替へさせけり。
また、馬が足を伸ばして敷居を蹴ったときは、
また、足を伸べて閾に蹴当てぬれば、
「これは鈍い馬で、きっと間違いを起こすだろう」と言って、
「これは鈍くして、誤ちあるべし」とて、
その馬に乗ることはありませんでした。
乗らざりけり。
その道の本質を知らない人が、
道を知らざらん人、
これほど注意を払うことができるでしょうか。
かばかり恐れなんや。
📚古文全文
城陸奥守泰盛は、さうなき馬乗りなりけり。
馬を引き出ださせけるに、足を揃へて閾をゆらりと越ゆるを見ては、「これは勇める馬なり」とて、鞍を置き替へさせけり。また、足を伸べて閾に蹴当てぬれば、「これは鈍くして、誤ちあるべし」とて、乗らざりけり。
道を知らざらん人、かばかり恐れなんや。