古文で読みたい

古典を読みたい人が、古典にアクセスするための本です

徒然草178|ある所の侍ども、内侍所の御神楽を見て、人に語るとて・・・

真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。

💭ポイント

宮中の儀式の剣を三種の神器の宝剣と勘違いした侍を、元典侍の女房がそっと正す。その深い知識をひけらかさない奥ゆかしい態度に、筆者は深く感心したと語る。

徒然草絵抄』(小泉吉永所蔵) 出典: 国書データベース

🌙現代語対訳

どこかの屋敷の侍たちが、宮中で行われる内侍所の御神楽を見物し、

あるところさぶらいども、内侍所ないしどころ御神楽みかぐらて、

人に語っていました。「宝剣を、あの方がお持ちになっていたぞ」

ひとかたるとて、「宝剣ほうけんをば、そのひとたまひつる」

などと話しているのを聞いて、奥に仕える女官の一人が、

などふをきて、うちなる女房にょうぼううちに、

「陛下が別の建物へいらっしゃるとき使う、昼の御座所の剣です」と、

別殿べつでん行幸ぎょうこうには、昼御座ひのおまし御剣ぎょけんにてこそあれ」と、

小声で言いました。感心しました。

しのびやかにひたりし。こころにくかりき。

この女官は、以前、典侍を務めた方だったということです。

そのひとふる典侍ないしのすけなりけるとかや。

📚古文全文

あるところさぶらいども、内侍所ないしどころ御神楽みかぐらて、ひとかたるとて、「宝剣ほうけんをば、そのひとたまひつる」などふをきて、うちなる女房にょうぼううちに、別殿べつでん行幸ぎょうこうには、昼御座ひのおまし御剣ぎょけんにてこそあれ」と、しのびやかにひたりし。こころにくかりき。

そのひとふる典侍ないしのすけなりけるとかや。