真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。
💭ポイント
護衛官の秦重躬は、信願が桃尻で荒馬を好むことから落馬を予言し的中させた。その道の達人の一言は神のようだと人々は感心した。
※桃尻の落馬原因として、着座位置が安定せず、筋力不足であることが想定されます。

🌙現代語対訳
護衛官の秦重躬が、北面の武士である下野入道信願に対して、
御随身秦の重躬、北面の下野入道信願を、
「落馬する人相がある人だ。よくよくお気をつけなさい」と言ったところ、
「落馬の相ある人なり。よくよく慎み給え」と言いけるを、
全く本気にしていなかったところ、
いとまことしからず思いけるに、
信願は、馬から落ちて死んでしまった。
信願、馬より落ちて死ににけり。
「専門の道に通じた人の一言は、神のようだ」と、人々は思った。
「道に長じぬる一言、神のごとし」と、人、思えり。
「ところで、いったいどのような相だったのですか」とある人が尋ねると、
「さて、いかなる相ぞ」と人の問いければ、
「極端な桃尻で、気性が激しい馬を好まれたので、
「きわめて桃尻にして、沛艾の馬を好みしかば、
この相が当てはまったのです。今まで言って誤ったことがありましょうか」
この相を負せ侍りき。いつかは申し誤りたる」
と言ったそうだ。
とぞ言いける。
📚古文全文
御随身秦の重躬、北面の下野入道信願を、「落馬の相ある人なり。よくよく慎み給え」と言いけるを、いとまことしからず思いけるに、信願、馬より落ちて死ににけり。「道に長じぬる一言、神のごとし」と、人、思えり。
「さて、いかなる相ぞ」と人の問いければ、「きわめて桃尻にして、沛艾の馬を好みしかば、この相を負せ侍りき。いつかは申し誤りたる」とぞ言いける。