古文で読みたい

古典を読みたい人が、古典にアクセスするための本です

徒然草143|人の終焉のありさまのいみじかりしことなど、人の語るを聞くに・・・

真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。

💭ポイント

人の死に様を理想的に語るのは故人の本意ではない。大切なのは生前の心のあり方で、最期の様子に一喜一憂すべきではない。

🌙現代語対訳

人の臨終の様子がすばらしかった、などと

ひと終焉しうゑんありさまのいみじかりしことなど、

誰かが語るのを聞くたびに、いつもこう思う。

ひとかたるをくに、

ただ、「穏やかで、取り乱すことなく」とだけ言えば、奥ゆかしくて良いものを、

ただ、「しづかにしてみだれず」とはばこころにくかるべきを、

愚かな人は、不思議なことや奇跡のようなことを付け加えて語り、

おろかなるひとは、あやしく、ことなるさうかたりつけ、

言った言葉も、振る舞いも、自分の理想に合うように脚色して褒め称えるのです。

ひし言葉ことばも、振舞ふるまひも、おのれがこのむかたにめなすこそ、

「それは故人の本当の姿ではなかったのではないか」と思えてなりません。

「そのひとごろの本意ほいにもあらずや」とおもゆれ。

死という重大事は、仏や菩薩の化身のような人でも、判断できるものではなく、

この大事だいじは、権化ごんげひとさだむべからず。

学識の深い学者であっても、推し量ることはできないものです。

博学はくがくもはかるべからず。

自分自身の心のあり方に間違いがなければ、

おのれたがところなくば、

他人が見聞きしたことに左右される必要はないのです。

ひと見聞けんもんにはよるべからず。

📚古文全文

ひと終焉しうゑんありさまのいみじかりしことなど、ひとかたるをくに、ただ、「しづかにしてみだれず」とはばこころにくかるべきを、おろかなるひとは、あやしく、ことなるさうかたりつけ、ひし言葉ことばも、振舞ふるまひも、おのれがこのむかたにめなすこそ、「そのひとごろの本意ほいにもあらずや」とおもゆれ。
この大事だいじは、権化ごんげひとさだむべからず。博学はくがくもはかるべからず。おのれたがところなくば、ひと見聞けんもんにはよるべからず。