真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。
💭ポイント
人の死に様を理想的に語るのは故人の本意ではない。大切なのは生前の心のあり方で、最期の様子に一喜一憂すべきではない。
🌙現代語対訳
人の臨終の様子がすばらしかった、などと
人の終焉のありさまのいみじかりしことなど、
誰かが語るのを聞くたびに、いつもこう思う。
人の語るを聞くに、
ただ、「穏やかで、取り乱すことなく」とだけ言えば、奥ゆかしくて良いものを、
ただ、「閑かにして乱れず」と言はば心にくかるべきを、
愚かな人は、不思議なことや奇跡のようなことを付け加えて語り、
愚かなる人は、あやしく、異なる相を語りつけ、
言った言葉も、振る舞いも、自分の理想に合うように脚色して褒め称えるのです。
言ひし言葉も、振舞ひも、おのれが好むかたに讃めなすこそ、
「それは故人の本当の姿ではなかったのではないか」と思えてなりません。
「その人の日ごろの本意にもあらずや」と思ゆれ。
死という重大事は、仏や菩薩の化身のような人でも、判断できるものではなく、
この大事は、権化の人も定むべからず。
学識の深い学者であっても、推し量ることはできないものです。
博学の士もはかるべからず。
自分自身の心のあり方に間違いがなければ、
おのれ違ふ所なくば、
他人が見聞きしたことに左右される必要はないのです。
人の見聞にはよるべからず。
📚古文全文
人の終焉のありさまのいみじかりしことなど、人の語るを聞くに、ただ、「閑かにして乱れず」と言はば心にくかるべきを、愚かなる人は、あやしく、異なる相を語りつけ、言ひし言葉も、振舞ひも、おのれが好むかたに讃めなすこそ、「その人の日ごろの本意にもあらずや」と思ゆれ。
この大事は、権化の人も定むべからず。博学の士もはかるべからず。おのれ違ふ所なくば、人の見聞にはよるべからず。