古文で読みたい

古典を読みたい人が、古典にアクセスするための本です

徒然草140|身死して財残ることは、智者のせざるところなり・・・

真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。

💭ポイント

死後に財産を残す愚かさを説く。物は執着や争いの元。生前に譲り、何も持たないのが理想だと兼好は語る。

🌙現代語対訳

死んだ後に財産を残すことは、賢い人がすることではありません。

してたからのこることは、智者ちしゃのせざるところなり。

つまらない物を残しておくのもみっともないですし、

よからぬものたくはきたるもつたなく、

立派な物は、「執着していたのだろう」と思われて空しいです。

よきものは、「こころをとめけん」とはかなし。

やたらに多いと、なおさら残念で、

こちたくおほかる、まして口惜くちをしし。

「私こそがそれを手に入れよう」などと言う者たちが、

「われこそめ」などものどもありて、

死後に争う様子は見苦しい。

あとにあらそひたる、さまし。

死後は誰かにと決めている物があるなら、

のちたれにとこころざすものあらば、

生きている間に譲ってしまうべきです。

けらんうちにぞゆづるべき。

日々の生活で、なくてはならない物はあるでしょうが、

朝夕あさゆうくてかなはざらんものこそあらめ、

それ以外は、一切持たないでいるのが理想的です。

そのほかは、なにたでぞあらまほしき。

📚古文全文

してたからのこることは、智者ちしゃのせざるところなり。よからぬものたくはきたるもつたなく、よきものは、「こころをとめけん」とはかなし。
こちたくおほかる、まして口惜くちをしし。「われこそめ」などものどもありて、あとにあらそひたる、さまし。のちたれにとこころざすものあらば、けらんうちにぞゆづるべき。
朝夕あさゆうくてかなはざらんものこそあらめ、そのほかは、なにたでぞあらまほしき。