真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。
💭ポイント
人が学ぶべきは学問・武芸・医術など実用的な才能で、詩歌などの多芸多才はかえって恥だと兼好は説く。

『徒然草絵抄』(小泉吉永所蔵) 出典: 国書データベース
🌙現代語対訳
人の教養としては、文章をよく理解し、
人の才能は、文あきらかにして、
聖人の教えを知っていることが一番です。
聖の教へを知れるを第一とす。
次には、習字です。専門にする必要はなくとも、
次には手書くこと、むねとすることはなくとも、
これを習っておくべきです。学問の助けになるからです。
これを習ふべし。学問に便あらんためなり。
次に、医療の知識と実践法を習うべきです。
次に医術を習ふべし。
自身の健康を保ち、他人を助け、主君や親に仕えるにも、
身を養ひ、人を助け、忠孝のつとめも、
医療の知識がなくてはなりません。
医にあらずはあるべからず。
次に、弓を射ることと馬に乗ることです。
次に弓射、馬に乗ること、
これらは六芸(礼楽射御書数)にも挙げられています。必ず学んでおくべきです。
六芸に出だせり。必ずこれをうかがふべし。
学問、武芸、医療の道は、本当に欠かせません。
文・武・医の道、まことに欠けてはあるべからず。
これらを学ぶ人を、無駄な人間だと言ってはなりません。
これを学ばんをば、いたづらなる人と言ふべからず。
次は食です。食は人にとって重要なものです。
次に食は人の天なり。
おいしい調理法に精通している人は、すばらしい才能と思うべきです。
よく味はひを調へ知れる人、大きなる徳とすべし。
次に、物作りです。様々な場面で必要です。
次に、細工。よろづの要多し。
これら以外のことは、多芸多才は君子の恥とするところです。
このほかのことども、多能は君子の恥づるところなり。
詩歌に巧みで、楽器の演奏に秀でているのは、
詩歌に巧みに、糸竹に妙なるは、
奥深い道で、君主も臣下も重んじるとはいえ、
幽玄の道、君臣これを重くすといへども、
今の世でこれで世を治めるのは、
今の世には、これをもちて世を治むること、
よくよく考えてみると、愚かしいことのようだ。
やうやく愚かなるに似たり。
黄金は美しいけれども、鉄の実用性には及ばないようなものです。
金はすぐれたれども、鉄の益多きにしかざるがごとし。
📚古文全文
人の才能は、文あきらかにして、聖の教へを知れるを第一とす。
次には手書くこと、むねとすることはなくとも、これを習ふべし。学問に便あらんためなり。
次に医術を習ふべし。身を養ひ、人を助け、忠孝のつとめも、医にあらずはあるべからず。
次に弓射、馬に乗ること、六芸に出だせり。必ずこれをうかがふべし。
文・武・医の道、まことに欠けてはあるべからず。これを学ばんをば、いたづらなる人と言ふべからず。
次に食は人の天なり。よく味はひを調へ知れる人、大きなる徳とすべし。
次に、細工。よろづの要多し。
このほかのことども、多能は君子の恥づるところなり。詩歌に巧みに、糸竹に妙なるは、幽玄の道、君臣これを重くすといへども、今の世には、これをもちて世を治むること、やうやく愚かなるに似たり。金はすぐれたれども、鉄の益多きにしかざるがごとし。