古文で読みたい

古典を読みたい人が、古典にアクセスするための本です

徒然草122|人の才能は、文あきらかにして、聖の教へを知れるを第一とす・・・

真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。

💭ポイント

人が学ぶべきは学問・武芸・医術など実用的な才能で、詩歌などの多芸多才はかえって恥だと兼好は説く。

徒然草絵抄』(小泉吉永所蔵) 出典: 国書データベース

🌙現代語対訳

人の教養としては、文章をよく理解し、

(ひと)才能(さいのう)は、(ふみ)あきらかにして、

聖人の教えを知っていることが一番です。

(ひじり)(おし)へを()れるを第一(だいいち)とす。

次には、習字です。専門にする必要はなくとも、

(つぎ)には()()くこと、むねとすることはなくとも、

これを習っておくべきです。学問の助けになるからです。

これを(なら)ふべし。学問(がくもん)便(びん)あらんためなり。

次に、医療の知識と実践法を習うべきです。

(つぎ)医術(いじゅつ)(なら)ふべし。

自身の健康を保ち、他人を助け、主君や親に仕えるにも、

()(やしな)ひ、(ひと)(たす)け、忠孝(ちゅうこう)のつとめも、

医療の知識がなくてはなりません。

()にあらずはあるべからず。

次に、弓を射ることと馬に乗ることです。

(つぎ)弓射(ゆみい)(うま)()ること、

これらは六芸(礼楽射御書数)にも挙げられています。必ず学んでおくべきです。

六芸(りくげい)()だせり。(かなら)ずこれをうかがふべし。

学問、武芸、医療の道は、本当に欠かせません。

(ぶん)()()(みち)、まことに()けてはあるべからず。

これらを学ぶ人を、無駄な人間だと言ってはなりません。

これを(まな)ばんをば、いたづらなる(ひと)()ふべからず。

次は食です。食は人にとって重要なものです。

(つぎ)(しょく)(ひと)てんなり。

おいしい調理法に精通している人は、すばらしい才能と思うべきです。

よくあじはひを調(ととの)()れる(ひと)(おお)きなる(とく)とすべし。

次に、物作りです。様々な場面で必要です。

(つぎ)に、細工(さいく)。よろづの(よう)(おお)し。

これら以外のことは、多芸多才は君子の恥とするところです。

このほかのことども、多能(たのう)君子(くんし)()づるところなり。

詩歌に巧みで、楽器の演奏に秀でているのは、

詩歌(しいか)(たくみ)みに、糸竹(しちく)(たえ)なるは、

奥深い道で、君主も臣下も重んじるとはいえ、

幽玄(ゆうげん)(みち)君臣(くんしん)これを(おも)くすといへども、

今の世でこれで世を治めるのは、

(いま)()には、これをもちて()(おさ)むること、

よくよく考えてみると、愚かしいことのようだ。

やうやく(おろ)かなるに()たり。

黄金は美しいけれども、鉄の実用性には及ばないようなものです。

(こがね)はすぐれたれども、(くろがね)(やく)(おお)きにしかざるがごとし。

📚古文全文

(ひと)才能(さいのう)は、(ふみ)あきらかにして、(ひじり)(おし)へを()れるを第一(だいいち)とす。
(つぎ)には()()くこと、むねとすることはなくとも、これを(なら)ふべし。学問(がくもん)便(びん)あらんためなり。
(つぎ)医術(いじゅつ)(なら)ふべし。()(やしな)ひ、(ひと)(たす)け、忠孝(ちゅうこう)のつとめも、()にあらずはある(ある)べからず。
(つぎ)弓射(ゆみい)(うま)()ること、六芸(りくげい)()だせり。(かなら)ずこれをうかがふべし。
(ぶん)()()(みち)、まことに()けてはあるべからず。これを(まな)ばんをば、いたづらなる(ひと)()ふべからず。
(つぎ)(しょく)(ひと)てんなり。よくあじ)はひを調(ととの)()れる(ひと)(おお)きなる(とく)とすべし。
(つぎ)に、細工(さいく)。よろづの(よう)(おお)し。
このほかのことども、多能(たのう)君子(くんし)()づるところなり。詩歌(しいか)(たくみ)みに、糸竹(しちく)(たえ)なるは、幽玄(ゆうげん)(みち)君臣(くんしん)これを(おも)くすといへども、(いま)()には、これをもちて()(おさ)むること、やうやく(おろ)かなるに()たり。(こがね)はすぐれたれども、(くろがね)(やく)(おお)きにしかざるがごとし。