古文で読みたい

古典を読みたい人が、古典にアクセスするための本です

徒然草105|北の屋かげに消え残りたる雪の、いたう凍りたるに・・・

真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。

💭ポイント

冬の夜明け、御堂で語り合う高貴な男女の姿。その謎めいた様子が、見る者の想像を掻き立てる話。

徒然草絵抄』(小泉吉永所蔵) 出典: 国書データベース

🌙現代語対訳

家の北側の影に解け残った雪が、カチカチに凍っていて、

きたかげにのこりたるゆきの、いたうこおりたるに、

そこに寄せた牛車の轅(牛をつなぐ長い柄)にも、霜が降りてきらめいています。

さしせたるくるまながえも、しもいたくきらめきて、

夜明けの月は明るくはっきりしていますが、隅々まで照らすほどではありません。

有明ありあけつきさやかなれども、くまなくはあらぬに、

人がいないお堂の廊下で、

人離ひとがれなる御堂みどうろうに、

高貴な身分と見える男と女が、廊下の縁に腰かけて、

なみなみにはあらずとゆるおとこおんな長押なげししりかけて、

語らう様子は、何を話しているのかと、尽きない想像を掻き立てられます。

物語ものがたりするさまこそ、何事なにごとにかあらん、きすまじけれ。

被り物や姿かたちは、とても洗練されて見え、

かぶし・かたちなど、いとよしとえて、

何とも言えない香りが、ふと漂ってくるのは趣深いことです。

えもいはぬにおひの、さとかおりたるこそをかしけれ。

かすかな物音が、途切れ途切れに聞こえてくるのも心をそそられます。

けはひなど、はつれはつれこえたるもゆかし。

📚古文全文

きたかげにのこりたるゆきの、いたうこおりたるに、さしせたるくるまながえも、しもいたくきらめきて、有明ありあけつきさやかなれども、くまなくはあらぬに、人離ひとがれなる御堂みどうろうに、なみなみにはあらずとゆるおとこおんな長押なげししりかけて、物語ものがたりするさまこそ、何事なにごとにかあらん、きすまじけれ。
かぶし・かたちなど、いとよしとえて、えもいはぬにおひの、さとかおりたるこそをかしけれ。けはひなど、はつれはつれこえたるもゆかし。