古文で読みたい

古典を読みたい人が、古典にアクセスするための本です

徒然草101|ある人、任大臣の節会の内弁を勤められけるに・・・

真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。

💭ポイント

大臣任命の儀式で進行役が宣命を忘れたが、機転の利く役人が女官にそっと届けさせ、窮地を救った話。

徒然草絵抄』(小泉吉永所蔵) 出典: 国書データベース

🌙現代語対訳

ある人が、大臣を任命するための儀式で、進行役を務めておられました。

あるひとにん大臣だいじん節会せちえ内弁ないべんつとめられけるに、

ところが、宣命(天皇の命令を記した文書)を受け取らずに、儀式の会場に来てしまったのです。

内記ないきちたる宣命せんみょうらずして、堂上どうじょうせられにけり。

この上ない大失態ですが、取りに戻るわけにもいきません。

きはまりなき失礼しつれいなれども、かえるべきにもあらず。

困り果てていたところ、

おもひわづらはれけるに、

六位外記の役人(大臣官房秘書官程度?)が、衣で顔を隠した女官に頼んで、

六位ろくい外記げき康綱やすつなきぬかづきの女房にょうぼうかたらひて、

その文書を進行役の人のもとへ、そっと届けさせました。

かの宣命せんみょうたせて、しのびやかにたてまつらせけり。

すばらしい機転でした。

いみじかりけり。

📚古文全文

あるひとにん大臣だいじん節会せちえ内弁ないべんつとめられけるに、内記ないきちたる宣命せんみょうらずして、堂上どうじょうせられにけり。はまりなき失礼しつれいなれども、かえるべきにもあらず。
おもひわづらはれけるに、六位ろくい外記げき康綱やすつなきぬかづきの女房にょうぼうかたらひて、かの宣命せんみょうたせて、しのびやかにたてまつらせけり。
いみじかりけり。