徒然草099|堀河相国は、美男のたのしき人にて、そのこととなく過差を好み給ひけり・・・
真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。
💭ポイント
贅沢好きな堀河相国が役所の古い唐櫃の新調を命じたが、「公物は古いことが尊い」という故実を重んじる役人らに反対され、中止になった話。

🌙現代語対訳
堀河相国は、美男子で、華やかなことを好む方であり、
堀河相国は、美男のたのしき人にて、
何事につけても贅沢がお好きでした。
そのこととなく過差を好み給ひけり。
息子の基俊卿を、検非違使庁の長官に任命し、公務を行わせていた時のことです。
御子基俊卿を大理になして、庁務行はれけるに、
「役所の唐櫃(木箱)が見苦しい」と言って、立派なものに作り替えるようにと、
「庁屋の唐櫃見苦し」とて、めでたく作り改めらるべきよし、
お命じになりました。しかし、その唐櫃は、大昔から伝わってきたもので、
仰せられけるに、この唐櫃は、上古より伝はりて、
いつからあるのかも分からないほど、数百年を経た品でした。
その始めを知らず。数百年を経たり。
代々の公の物は、古びて傷んでいること自体を、手本とすべきものです。
累代の公物、古弊をもちて規模とす。
そのため、簡単には作り替えられませんと、昔からの慣習に詳しい役人たちが申し上げたので、
たやすく改められがたきよし、故実の諸官ら申しければ、
その話は、立ち消えになりました。
そのことやみにけり。
📚古文全文
堀河相国は、美男のたのしき人にて、そのこととなく過差を好み給ひけり。御子基俊卿を大理になして、庁務行はれけるに、「庁屋の唐櫃見苦し」とて、めでたく作り改めらるべきよし、仰せられけるに、この唐櫃は、上古より伝はりて、その始めを知らず。数百年を経たり。累代の公物、古弊をもちて規模とす。たやすく改められがたきよし、故実の諸官ら申しければ、そのことやみにけり。