古文で読みたい

古典を読みたい人が、古典にアクセスするための本です

徒然草090|大納言法印の召し使ひし乙鶴丸、やすら殿といふ者を知りて・・・

真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。

💭ポイント

法印の召使い乙鶴丸が、想い人について男か法師か問われ、恥ずかしそうに「頭は見ていないので分かりません」と答えた、という滑稽な話。

徒然草絵抄』(小泉吉永所蔵) 出典: 国書データベース

🌙現代語対訳

大納言法印という高僧に仕えていた乙鶴丸という少年が、

大納言だいなごん法印ほういん使つかひし鶴丸おとづるまる

「やすら殿」という人と知り合いになり、いつもその人のもとへ通っていました。

やすら殿どのといふものりて、つねかよひしに、

ある時、乙鶴丸が外出から帰ってくると、

あるときでてかえたるを、

法印が「どこへ行っていたのだ」と尋ねました。

法印ほういん、「いづくへきつるぞ」とひしかば、

鶴丸は、「やすら殿のもとへ、行っておりました」と答えます。

「やすら殿どののがり、まかりてそうろふ」とふ。

「その、やすら殿というのは、俗世の男か、それとも法師か」と尋ねると、

「そのやすら殿どのは、おとこ法師ほうしか」と、またはれて、

鶴丸は、袖を合わせながら、

そでかきはせて、

「さあ、どうでしょうか。頭は見ませんでしたので」と答えました。

「いかがそうろふらん。かしらをばそうろはず」とこたもうしき。

どうして、頭だけが見えなかったのでしょうね。

などか、かしらばかりのえざりけん。

📚古文全文

大納言だいなごん法印ほういん使つかひし鶴丸おとづるまる、やすら殿どのといふものりて、つねかよひしに、あるときでてかえたるを、法印ほういん、「いづくへきつるぞ」とひしかば、「やすら殿どののがり、まかりてそうろふ」とふ。
「そのやすら殿どのは、おとこ法師ほうしか」と、またはれて、そでかきはせて、「いかがそうろふらん。かしらをばそうろはず」とこたもうしき。
などか、かしらばかりのえざりけん。