古文で読みたい

古典を読みたい人が、古典にアクセスするための本です

徒然草088|ある者、小野道風の書ける和漢朗詠集とて持ちたりけるを・・・

真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。

💭ポイント

小野道風筆の和漢朗詠集を持つ男。時代が合わないとの指摘を「だからこそ有り難い宝だ」と曲解し、ますます秘蔵してしまう滑稽譚。

徒然草絵抄』(小泉吉永所蔵) 出典: 国書データベース

🌙現代語対訳

ある人が、小野道風が書いた和漢朗詠集だという書物を持っていました。

ある(もの)小野道風(おののみちかぜ)()ける和漢朗詠集(わかんろうえいしゅう)とて()ちたりけるを、

ある人が、「代々受け継いでこられた物を、疑うわけではございませんが、

ある(ひと)、「相伝(ごそうでん)()けることには(はべ)らじなれども、

和漢朗詠集は四条大納言(藤原公任)が編纂したものです。

四条大納言(しじょうだいなごん)(えら)ばれたるものを、

小野道風がこれを書写したというのは、時代が合わないのではないでしょうか。

道風(みちかぜ)()かんこと、時代(じだい)やたがひ(はべ)らん。

疑わしく思われます」といったところ、

おぼつかなくこそ」と()ひければ、

「だからこそ、この世に二つとない、ありがたい物なのです」

「さ(そうら)へばこそ、()にありがたきものには(はべ)りけれ」

と言って、ますます大切にしまい込んだということです。

とて、いよいよ秘蔵(ひぞう)しけり。

📚古文全文

ある(もの)小野道風(おののみちかぜ)()ける和漢朗詠集(わかんろうえいしゅう)とて()ちたりけるを、ある(ひと)、「相伝(ごそうでん)()けることには(はべ)らじなれども、四条大納言(しじょうだいなごん)(えら)ばれたるものを、道風(みちかぜ)()かんこと、時代(じだい)やたがひ(はべ)らん。おぼつかなくこそ」と()ひければ、「さ(そうら)へばこそ、()にありがたきものには(はべ)りけれ」とて、いよいよ秘蔵(ひぞう)しけり。