古文で読みたい

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徒然草086|惟継中納言は、風月の才に富める人なり・・・

真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。

💭ポイント

三井寺が焼失した際、惟継中納言がそこの僧侶に言った機知に富んだ言葉を、見事な秀句として紹介している。

徒然草絵抄』(小泉吉永所蔵) 出典: 国書データベース

🌙現代語対訳

惟継中納言という方は、漢詩の才能に恵まれた人でした。

惟継中納言これつぐちゅうなごんは、風月ふげつさいめるひとなり。

仏道修行に専念し読経を続け、三井寺の円伊僧正と同じ宿坊にいました。

一生いっしゃう精進しやうじんにて、読経どきやううちして、寺法師てらほうし円伊僧正えんいそうじょう同宿どうしゅくしてはべりけるに、

文保年間に三井寺が焼き討ちに遭ったとき(1319)、中納言は円伊僧正に会うと、

文保ぶんぽう三井寺みいでらかれしとき坊主ぼうずにあひて、

「あなたのことを『寺法師』とお呼びしていましたが、寺がなくなってしまいましたので、これからは、ただの『法師』とお呼びしなくてはなりません」といいました。

御坊ごばうをば寺法師てらほうしとこそもうしつれど、てらはなければ、いまよりは法師ほうしとこそもうさめ」とはれけり。

見事な気の利いた言葉でした。

いみじき秀句しゅうくなりけり。

📚古文全文

惟継中納言これつぐちゅうなごんは、風月ふうげつさいめるひとなり。
一生いっしゃう精進そうじにて、読経どきやううちして、寺法師てらほうし円伊僧正えんいそうじょう同宿どうしゅくしてはべりけるに、文保ぶんぽう三井寺みいでらかれしとき坊主ぼうずにあひて、「御坊ごばうをば寺法師てらほうしとこそもうしつれど、てらはなければ、いまよりは法師ほうしとこそもうさめ」とはれけり。
いみじき秀句しゅうくなりけり。