真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。
💭ポイント
三井寺が焼失した際、惟継中納言がそこの僧侶に言った機知に富んだ言葉を、見事な秀句として紹介している。

🌙現代語対訳
惟継中納言は、風月の才に富める人なり。
仏道修行に専念し読経を続け、三井寺の円伊僧正と同じ宿坊にいました。
一生精進にて、読経うちして、寺法師の円伊僧正と同宿して侍りけるに、
文保年間に三井寺が焼き討ちに遭ったとき(1319)、中納言は円伊僧正に会うと、
文保に三井寺焼かれし時、坊主にあひて、
「あなたのことを『寺法師』とお呼びしていましたが、寺がなくなってしまいましたので、これからは、ただの『法師』とお呼びしなくてはなりません」といいました。
「御坊をば寺法師とこそ申しつれど、寺はなければ、今よりは法師とこそ申さめ」と言はれけり。
見事な気の利いた言葉でした。
いみじき秀句なりけり。
📚古文全文
惟継中納言は、風月の才に富める人なり。
一生精進にて、読経うちして、寺法師の円伊僧正と同宿して侍りけるに、文保に三井寺焼かれし時、坊主にあひて、「御坊をば寺法師とこそ申しつれど、寺はなければ、今よりは法師とこそ申さめ」と言はれけり。
いみじき秀句なりけり。