古文で読みたい

古典を読みたい人が、古典にアクセスするための本です

徒然草084|法顕三蔵の、天竺に渡りて、故郷の扇を見ては悲しび・・・

真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。

💭ポイント

偉大な僧の弱さを非難せず「情深い」と見た弘融僧都の感性に、筆者は奥ゆかしい魅力を感じている。

徒然草絵抄』(小泉吉永所蔵) 出典: 国書データベース

🌙現代語対訳

法顕三蔵(ほっけんさんぞう)が、インドにわたり、故郷中国の扇を見ては悲しみ、

法顕三蔵ほつけんさんざうの、天竺てんじくわたりて、故郷こきやうあふぎてはかなしび、

病気で床に伏した時には、故郷の食べ物が食べたいと願われた、という話を聞いて、

やまひしてはかんしよくねがたまひけることをきて、

「あれほど偉大な方が、ひどく弱々しい様子を

「さばかりのひとの、無下むげにこそ、こころよわ気色けしき

異国の地で、お見せになったものだ」と、ある人が言いました。

ひとくににてたまひけれ」とひとひしに、

これに対して弘融僧都が「ほんとうに優雅で、情愛のある三蔵法師だ」と、言ったのは、

弘融僧都こうゆうそうず、「いうなさけありける三蔵さんぞうかな」とひたりしこそ、

世間の僧侶にありがちな堅苦しい説教くささがなく、心惹かれる感じがしました。

法師ほうしのやうにもあらず、こころにくくおぼえしか。

📚古文全文

法顕三蔵ほつけんさんざうの、天竺てんじくわたりて、故郷こきやうあふぎてはかなしび、やまひしてはかんしよくねがたまひけることをきて、「さばかりのひとの、無下むげにこそ、こころよわ気色けしきひとくににてたまひけれ」とひとひしに、弘融僧都こうゆうそうず、「いうなさけありける三蔵さんぞうかな」とひたりしこそ、法師ほうしのやうにもあらず、こころにくくおぼえしか。