徒然草083|竹林院入道左大臣殿、太政大臣にあがり給はんに・・・
真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。
💭ポイント
最高位を目前に出家した大臣を例に、物事は頂点を極めると衰えるため、一歩手前でとどまるのが良いと説く。

🌙現代語対訳
竹林院入道左大臣殿は、最高位である太政大臣に昇進されるのに、
何の差し支えもない方でした。
なにのとどこほりかおはせんなれども、
「面白みがない。今の左大臣(一上)のままで終えよう」と言って、
「珍しげなし。一上にてやみなん」とて、
出家なさいました。
出家し給ひにけり。
洞院左大臣殿も、この竹林院殿の決断に感銘を受けて、
洞院左大臣殿、このことを甘心し給ひて、
太政大臣の位を望まれませんでした。
相国の望みおはせざりけり。
「亢竜の悔(昇りつめた竜は下るだけで後悔する)」とかいう言葉があります。
「亢竜の悔いあり」とかやいふこと侍るなり。
月も満ちれば欠け始め、物事も絶頂を迎えれば、あとは衰えます。
月、満ちては欠け、もの、盛りにしては衰ふ。
何事においても、行き着くところまで行くのは、破滅へ近づく道です。
よろづのこと、先のつまりたるは、破に近き道なり。
📚古文全文
竹林院入道左大臣殿、太政大臣にあがり給はんに、なにのとどこほりかおはせんなれども、「珍しげなし。一上にてやみなん」とて、出家し給ひにけり。
洞院左大臣殿、このことを甘心し給ひて、相国の望みおはせざりけり。
「亢竜の悔いあり」とかやいふこと侍るなり。月、満ちては欠け、もの、盛りにしては衰ふ。よろづのこと、先のつまりたるは、破に近き道なり。