真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。
ポイント
世俗の交わりは心を惑わすだけ。縁から離れ一人静かに過ごすことこそ、心の安らぎを得る最上の方法だ。

🌙現代語対訳
何もすることが無いことを嘆く人は、どのような心境なのでしょう。
つれづれわぶる人は、いかなる心ならん。
何にも心を乱されず、ただ一人で過ごすことこそ良いことです。
まぎるるかたなく、ただ一人あるのみこそよけれ。
世間に合わせると、心は外部の塵に奪われて惑いやすくなります。
世に従へば、心、外の塵に奪はれて惑ひやすく。
人と交われば、言葉は受け売りとなり、
人にまじはれば、言葉、よその聞きに随ひて、
まったく自分の心からのものではなくなります。
さながら心にあらず。
人とふざけ、物を争い、ある時は恨み、ある時は喜びます。
人に戯れ、物に争ひ、一度は恨み、一度は喜ぶ。
その動きは、定まることがありません。
そのこと、定れることなし。
思考は乱れ起こり、損得勘定がやむ時もありません。
分別みだりに起りて、得失やむ時なし。
迷いの上にさらに酔い、酔ったまま夢を見ているようです。
惑ひの上に酔へり、酔ひの中に夢をなす。
あわただしく走り回って、ぼうっとして大事なことを忘れてしまう。
走りて急がはしく、呆れて忘れたること、
人は皆、このようです。
人、みなかくのごとし。
まだ真の道を知らずとも、まずは世俗的な関わりや執着から距離を置いて、
いまだまことの道を知らずとも、縁を離れて、
身を静かにし、雑事に関わらず、心を安らかにすることこそ、
身を閑かにし、事にあづからずして、心をやすくせんこそ、
しばらくの間は(まことの道に近い生活が)楽しいと言えるでしょう。
しばらく楽しぶとも言ひつべけれ。
「生活・人事・伎能・学問などの縁をやめよ」と、
「生活・人事・伎能・学問等の諸縁をやめよ」とこそ、
摩訶止観(仏教の瞑想法解説書)にもあります。
摩訶止観にも侍れ。
📚古文全文
つれづれわぶる人は、いかなる心ならん。まぎるるかたなく、ただ一人あるのみこそよけれ。
世に従へば、心、外の塵に奪はれて惑ひやすく。人にまじはれば、言葉、よその聞きに随ひて、さながら心にあらず。人に戯れ、物に争ひ、一度は恨み、一度は喜ぶ。そのこと、定れることなし。分別みだりに起りて、得失やむ時なし。惑ひの上に酔へり、酔ひの中に夢をなす。走りて急がはしく、呆れて忘れたること、人、みなかくのごとし。
いまだまことの道を知らずとも、縁を離れて、身を閑かにし、事にあづからずして、心をやすくせんこそ、しばらく楽しぶとも言ひつべけれ。
「生活・人事・伎能・学問等の諸縁をやめよ」とこそ、摩訶止観にも侍れ。