徒然草072|賤げなるもの。居たるあたりに調度の多き・・・
真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。
💭ポイント
多すぎると品がなく見える物事を列挙し、逆に多くても見苦しくないものとして書物と塵を挙げ、作者独自の美意識を浮き彫りにする一節。
🌙現代語対訳

品がなく、卑しく見えるもの。
賤げなるもの。
座っている周りに、やたらに調度品が多いこと。
居たるあたりに調度の多き。
硯箱(すずりばこ)の中に、筆が多すぎること。
硯に筆の多き。
持仏堂(仏間)に、仏像をやたらと多く並べること。
持仏堂に仏の多き。
庭に、石や植木をたくさん置きすぎること。
前栽に石・草木の多き。
家の中に、子供や孫が大勢いすぎること。
家の内に子孫の多き。
人に会った時に、言葉数が多すぎること。
人にあひて詞の多き。
願文(神仏に願をたてるときの文書)に、自分の善行を長々と書き連ねること。
願文に作善多く書き載せたる。
逆に、多くても見苦しくないもの。
多くて見苦しからぬは、
文車(書物を積んだ車)の中にある、たくさんの書物。
文車の文、
掃きだめの、うず高く積もった塵(ちり)。
塵塚の塵。

📚古文全文
賤げなるもの。居たるあたりに調度の多き。硯に筆の多き。持仏堂に仏の多き。前栽に石・草木の多き。家の内に子孫の多き。人にあひて詞の多き。願文に作善多く書き載せたる。
多くて見苦しからぬは、文車の文、塵塚の塵。