古文で読みたい

古典を読みたい人が、古典にアクセスするための本です

徒然草071|名を聞くより、やがて面影は推し量らるる心地するを・・・

真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。

💭ポイント

想像した顔は実物と違い、昔の物語も現代に当てはめてしまう。また既視感(デジャヴ)を覚えることがある。こうした感覚は、果たして自分だけのものなのだろうか。

🌙現代語対訳

名前を聞くと、自然と顔つきまで想像してしまうものですが、

くより、やがて面影おもかげはからるる心地ここちするを、

実際に会ってみると、想像していた通りの顔の人というのは、まずいません。

ときは、またかねておもひつるままのかおしたるひとこそなけれ。

昔の物語を聞いても、

昔物語むかしものがたりきても、

「今の時代の誰それさんの家のような感じだったのだろう」と思えて、

「このごろのひといえの、そこほどにてぞありけん」とおぼえて、

登場人物も、周りにいる誰かに重ね合わせて考えてしまいます。

ひといまひとなかおもひよそへらるるは、

誰もがこのように感じるものなのでしょうか。

たれもかくおぼゆるにや。

もう一つ、何かの折に、

また、いかなるおりぞ、

たった今、人が話していることや、目に見えている光景、さらには自分自身の心の中まで、

ただいまひとふことも、ゆるものも、わがこころうちも、

「これと全く同じことが、いつか、どこかであったはずだ」と感じられ、

「かかることのいつぞやありしか」とおぼえて、

いつのことだったかは、思い出せないのですが、

いつとはおもでねども、

確かに経験したという感覚があるのです。

まさしくありし心地ここちのするは、

このようなことを感じるのは、私だけでしょうか。

わればかりかくおもふにや。

📚古文全文

くより、やがて面影おもかげはからるる心地ここちするを、ときは、またかねておもひつるままのかおしたるひとこそなけれ。昔物語むかしものがたりきても、「このごろのひといえの、そこほどにてぞありけん」とおぼえて、ひといまひとなかおもひよそへらるるは、たれもかくおぼゆるにや。
また、いかなるおりぞ、ただいまひとふことも、ゆるものも、わがこころうちも、「かかることのいつぞやありしか」とおぼえて、いつとはおもでねども、まさしくありし心地ここちのするは、わればかりかくおもふにや。