古文で読みたい

古典を読みたい人が、古典にアクセスするための本です

徒然草070|元応の清暑堂の御遊に、玄上は失せにしころ・・・

真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。

💭ポイント

宮中の音楽会で大臣の琵琶の部品が取れるも、持参の糊で修理し事なきを得た。後に謎の女性がそれを一度外し元に戻したという、機転と不思議な逸話。

琵琶の管理担当者が応急修理の状況を確認しただけだと思います。

🌙現代語対訳

出典:「徒然草絵抄」京都大学付属図書館所蔵

元応年間(1319-1321)に宮中の清暑堂で開かれた演奏会で

元応げんおう清暑堂せいしょどう御遊ぎょゆうに、

有名な琵琶「玄上」が盗難で失われていた頃で、

玄上げんじょうせにしころ、

菊亭大臣(琵琶の名手、藤原兼季)が、代わりに牧馬という琵琶をお弾きになりました。

菊亭きくてい大臣おとど牧馬ぼくばたまひけるに、

座に着き、まず楽器の柱を確かめられると、

きて、まづ、じゅうさぐられたりければ、

一つが取れてしまいました。

ひとちにけり。

大臣は懐に続飯(米粒で作った糊)をお持ちで、

御懐おんふところにそくひをたまひたるにて、

それを使って、お付けになったので、

けられにければ、

神へのお供え物が運ばれてくる頃にはすっかり乾き、

神供じんぐまいるほどによくて、

何事もなかったありませんでした。

ことゆゑなかりけり。

どういう意図があったのか分かりませんが、

いかなる意趣いしゅかありけん、

見物をしていた、衣をかぶって顔を隠した女性が、

物見ものみけるきぬかづきの、

近寄ってその柱を外し、

りてはなちて、

また元通りに置いていったのだ、ということです。

もとのやうにきたりけるとぞ。

📚古文全文

元応げんおう清暑堂せいしょどう御遊ぎょゆうに、玄上げんじょうせにしころ、菊亭きくてい大臣おとど牧馬ぼくばたまひけるに、きて、まづ、じゅうさぐられたりければ、ひとちにけり。
御懐おんふところにそくひをたまひたるにて、けられにければ、神供じんぐまいるほどによくて、ことゆゑなかりけり。
いかなる意趣いしゅかありけん、物見ものみけるきぬかづきの、りてはなちて、もとのやうにきたりけるとぞ。