真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。
ポイント
住宅の構造は夏を基準に考え、風情や明るさを工夫し、あえて無駄な空間を作っておくのが良い、と筆者は述べている。

🌙現代語対訳
住宅の構造は、夏を基本にするべきです。
家の作りやうは、夏をむねとすべし。
冬は、どんな所にでも住むことができますが、
冬はいかなる所にも住まる。
夏の暑い時期に過ごしにくい住居は、耐えがたいものです。
暑きころ悪き住居は耐へがたきことなり。
(庭の池なども)水が深いと涼しげには見えません。
深き水は凉しげなし。
浅くて、さらさらと流れている方が、ずっと涼やかに感じられます。
浅くて流れたる、はるかに凉し。
細かい物を見るには、引戸の方が跳上げ戸より、明るくて良いでしょう。
細かなるものを見るに、遣戸は蔀の間よりも明し。
天井が高い部屋は、冬は寒く、灯りも暗く感じられます。
天井の高きは、冬寒く、灯暗し。
家の造りについては、「あえて特定の使い道を決めない、無駄な空間を作っておくのが良い」
造作は用なき所を作りたる。
そういう空間は、見た目にも面白みがあり、いざという時には何にでも使えて重宝するものだと、
見るも面白く、よろづの用にも立ちてよしとぞ、
人々の、このような意見がありました。
人の定めあひ侍りし。
📚古文全文
家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬はいかなる所にも住まる。暑きころ悪き住居は耐へがたきことなり。深き水は凉しげなし。浅くて流れたる、はるかに凉し。
細かなるものを見るに、遣戸は蔀の間よりも明し。天井の高きは、冬寒く、灯暗し。
造作は用なき所を作りたる。見るも面白く、よろづの用にも立ちてよしとぞ、人の定めあひ侍りし。