真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。
💭ポイント
亀山殿の池に水車を作る際、地元の民は失敗したが、専門家である宇治の職人は成功した。何事も専門家は尊いものである。

🌙現代語対訳
亀山殿(嵯峨野にある上皇・法皇の御所)の池に、大井川(現在の保津川)の水を引こうとして、
亀山殿の御池に、大井川の 水をまかせられんとて、
大井の住民に命じ、水車を作らせた。
大井の土民に仰せて、水車を作らせられけり。
たくさんのお金を与え、数日かけて完成させ
多くの銭を給ひて、数日に営み出して、
設置したが、全く回らなかったので、
かけたりけるに、おほかた廻らざり ければ、
あれこれ直したが、とうとう回らず、
とかく直しけれども、つひに回らで、
むなしく立っているだけだった。
いたづらに立てりけり。
そこで、宇治の里の住人を呼んで作らせたところ、
さて、宇治の里人を召して、こしらへさせければ、
たやすく組み立てて献上し、
やすらかにゆひて参らせたりけるが、
思った通りに回り、水を汲み入れる様子は見事であった。
思ふやうに廻りて、水を汲み入るることめでたかりけり。
何事においても、その道の専門家は、尊いものである。
よろづに、その道を知れる者は、やんごとなきものなり。
📚古文全文
亀山殿の御池に、大井川の 水をまかせられんとて、大井の土民に仰せて、水車を作らせられけり。
多くの銭を給ひて、数日に営み出して、かけたりけるに、おほかた廻らざり ければ、とかく直しけれども、つひに回らで、いたづらに立てりけり。
さて、宇治の里人を召して、こしらへさせければ、やすらかにゆひて参らせたりけるが、思ふやうに廻りて、水を汲み入るることめでたかりけり。
よろづに、その道を知れる者は、やんごとなきものなり。