古文で読みたい

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徒然草045|公世の二位のせうとに、良覚僧正と聞こえしは・・・

真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。

💭ポイント

短気な僧正が、あだ名を嫌って行動するたび、かえって新しいあだ名をつけられる滑稽な話。

徒然草絵抄』(小泉吉永所蔵) 出典: 国書データベース

🌙現代語対訳

藤原公世の二位という方の兄に、良覚僧正という方がいましたが、

公世きんよ二位にいのせうとに、良覚りょうがく僧正そうじょうこえしは、

たいそう短気な人でした。

きわめてはらあしきひとなりけり。

お寺のそばに、大きな榎(エノキ)の木があったので、

ぼうかたわらに、おおきなるのありければ、

人々は「榎木僧正」と呼んでいました。

ひと、「榎木えのき僧正そうじょう」とぞひける。

「このあだ名は、よろしくない」と言って、その木を切ってしまいました。

「この、しかるべからず」とて、かのられにけり。

その切り株が残ったので、「切り株の僧正」と言うようになりました。

そののありければ、「きりくひの僧正そうじょう」とひけり。

ますます腹を立てて、切り株を掘って捨てたところ、

いよいよ腹立はらだちて、きりくひをてたりければ、

その跡が、大きな堀になってしまったので、

そのあとおおきなるほりにてありければ、

「堀池僧正」と言うようになったということです。

堀池ほりけ僧正そうじょうとぞひける。

📚古文全文

公世きんよ二位にいのせうとに、良覚りょうがく僧正そうじょうこえしは、きわめてはらあしきひとなりけり。
ぼうかたわらに、おおきなるのありければ、ひと、「榎木えのき僧正そうじょう」とぞひける。
「この、しかるべからず」とて、かのられにけり。そののありければ、「きりくひの僧正そうじょう」とひけり。
いよいよ腹立はらだちて、きりくひをてたりければ、そのあとおおきなるほりにてありければ、堀池ほりけ僧正そうじょうとぞひける。