真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。
💭ポイント
しばらく会いに行かず気まずい時、女性の方から恨み言でなく気遣いのある連絡が来た。その細やかな心遣いができる人こそ素晴らしいという話。

🌙現代語対訳
「長い間会いに行かなかったとき、
「久しく訪れぬころ、
『どれほど恨んでいることだろう』と、自分の不義理が身にしみて、
『いかばかり恨むらん』と、わが怠り思ひ知られて、
言葉が出ないような気持ちになりますが、
言葉なき心地するに、
そんな時に、女性の方から、
女のかたより、
『雑用係はいますか。一人よこして』などと、手紙をくれることがあり、
『仕丁やある。一人』など、言ひおこせたるこそ、
ありがたく、嬉しいものです。
ありがたく嬉しけれ。
そのような心遣いができる人こそ、素晴らしい人です」
さる心ざましたる人ぞよき」
と、ある人が申しておりましたが、実にその通りだと思える話です。
と、人の申し侍りし、さもあるべきことなり。
📚古文全文
「久しく訪れぬころ、『いかばかり恨むらん』と、わが怠り思ひ知られて、言葉なき心地するに、女のかたより、『仕丁やある。一人』など、言ひおこせたるこそ、ありがたく嬉しけれ。さる心ざましたる人ぞよき」と、人の申し侍りし、さもあるべきことなり。