真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。
💭ポイント
香の原料である甲香とは巻貝の蓋のこと。武蔵国金沢では「へなたり」と呼ばれていた、という豆知識。
※武蔵国金沢:現在の横浜市金沢区。兼好は金沢に住んでいたことがある。

🌙現代語対訳
甲香(かいこう)とは、法螺貝に似ているが、小さくて、
甲香は法螺貝のやうなるが、小さくて、
口の部分が細長い貝の蓋のことです。
口のほどの細長にして出でたる貝の蓋なり。
これは、武蔵国の金沢という海岸で採れたのですが、
武蔵国金沢といふ浦にありしを、
土地の人は、「へなたり」と呼んでおりますと言っていました。
所の者は、「へなたりと申し侍る」とぞ言ひし。
📚古文全文
甲香は法螺貝のやうなるが、小さくて、口のほどの細長にして出でたる貝の蓋なり。
武蔵国金沢といふ浦にありしを、所の者は、「へなたりと申し侍る」とぞ言ひし。