古文で読みたい

古典を読みたい人が、古典にアクセスするための本です

徒然草033|今の内裏作り出だされて、有職の人々に見せられけるに・・・

真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。

💭ポイント

専門家が完璧と評した新内裏の誤りを、玄輝門院が記憶を元に指摘した。その鋭い観察眼が素晴らしいという話。

徒然草絵抄』(小泉吉永所蔵) 出典: 国書データベース

🌙現代語対訳

新しい内裏が完成し、

いま内裏だいりつくだされて、

儀式や建築の有識者の人々にお披露目された時のことです。

有職いうそく人々ひとびとせられけるに、

有識者たちは「どこにも問題はない」と評価し、

「いづくもなんなし」とて、

天皇が新しい御所へお移りになる日も、すでに近くなっていました。

すでに遷幸せんこうちかくなりけるに、

その時、玄輝門院(後深草天皇の妃、伏見天皇の生母)が御覧になって、

玄輝門院げんきもんいん御覧ごらんじて、

「(この内裏の手本となった)閑院殿の壁にあったくし形の窓は、

閑院殿かんいんでん櫛形くしがたあなは、

丸い形で、縁もありませんでしたよ」と

まろく、ふちもなくてぞありし」と

仰いました。その指摘は素晴らしいものでした。

おほせられける、いみじかりけり。

というのも、新しい窓は葉っぱのような形で、

これはえうりて、

木の枠で縁取りがされていて、

にてふちをしたりければ、

違っているので直されたということでした。

あやまりにてなほされにけり。

 

明治~大正期の櫛(木製)装飾品;パブリックドメイン、whikipedia 2025.7.21

📚古文全文

いま内裏だいりつくだされて、有職いうそく人々ひとびとせられけるに、「いづくもなんなし」とて、すでに遷幸せんこうちかくなりけるに、玄輝門院げんきもんいん御覧ごらんじて、「閑院殿かんいんでん櫛形くしがたあなは、まろく、ふちもなくてぞありし」とおほせられける、いみじかりけり。
これはえうりて、にてふちをしたりければ、あやまりにてなほされにけり。