古文で読みたい

古典を読みたい人が、古典にアクセスするための本です

徒然草031|雪のおもしろう降りたりし朝、人のがり言ふべきことありて・・・

真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。

💭ポイント

雪の朝、用件のみの手紙を送ると、風流心がないと返事が来た。今では故人との洒落たやり取りが忘れがたい。

徒然草絵抄』(小泉吉永所蔵) 出典: 国書データベース

🌙現代語対訳

雪が趣深く降り積もった、ある朝のこと。

ゆきのおもしろうりたりしあした

ある人のところへ用事があって、手紙を送ったのですが、

ひとのがりふべきことありて、ふみをやるとて、

雪のことには一言も触れませんでした。

ゆきのことなんともはざりし

すると、手紙の返事には、

かへごとに、

『今朝の雪は、いかがですか』と、

『このゆきいかがる』と、

一言もお尋ねにならないほど、

一筆いっぴつのたまはせぬほどの、

風流をわかっていない人のおっしゃる用件を、

ひがひがしからんひとおほせらるること、

真面目に聞くべきでしょうか。

るべきかは。

まったくもって、残念な感性ですねと、

かへすがへす口惜くちをしき御心おんこころなりと

書いてきたのは、なんとも洒落ていました。

ひたりしこそ、をかしかりしか。

この手紙の人は、もう亡くなってしまったので、

いまひとなれば、

このような些細なことも、忘れがたく思い出されます。

かばかりのこともわすれがたし。

📚古文全文

ゆきのおもしろうりたりしあしたひとのがりふべきことありて、ふみをやるとて、ゆきのことなんともはざりしかへごとに、「『このゆきいかがる』と、一筆いっぴつのたまはせぬほどの、ひがひがしからんひとおほせらるること、るべきかは。かへすがへす口惜くちをしき御心おんこころなり」とひたりしこそ、をかしかりしか。
いまひとなれば、かばかりのこともわすれがたし。