古文で読みたい

古典を読みたい人が、古典にアクセスするための本です

徒然草029|静かに思へば、よろづに過ぎにしかたの恋しさのみぞ・・・

真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。

💭ポイント

亡き人の手跡や遺品に触れ、過ぎ去った日々を恋しく思う。持ち主を失っても変わらぬ物に、どうしようもない悲しさを感じる。

徒然草絵抄』(小泉吉永所蔵) 出典: 国書データベース

🌙現代語対訳

静かに物思いにふけっていると、何事につけても、過ぎ去った日々への恋しさだけが、

しづかにおもへば、よろづにぎにしかたのこいしさのみぞ、

どうしようもなく込み上げてきます。

せんかたなき。

夜、あたりが寝静まった後、長い夜の退屈しのぎに、

ひとしづまりてのちながのすさびに、

どうということのない、身の回り品をとりだして、

なんとなき具足ぐそくとりしたため、

「取っておく必要もないだろう」と思う書き損じの紙などを、破り捨てている最中に、

のこかじ」とおも反古ほごなど、やぶつるなかに、

今は亡き人が練習で書いた文字や、気まぐれに描いた絵などを

ひと手習てならひ、絵描えかきすさびたる、

見つけることがあり、まるで当時に戻ったような、気持ちになるのです。

見出みいでたるこそ、ただそのをり心地ここちすれ。

今も生きている人からの手紙でさえ、長い時間が経ってから、

このごろあるひとふみだに、ひさしくなりて、

「どういう時の、いつの年だったか」

「いかなるおり、いつのとしなりけん」

などと思い返すのは、切ないものです。

おもふは、あはれなるぞかし。

故人が使い慣れた道具なども、心を持っていませんが、

なれし具足ぐそくなども、こころもなくて、

昔のままの姿でそこにあり続けます。悲しいことです。

はらずひさしき。いとかなし。

📚古文全文

しづかにおもへば、よろづにぎにしかたのこいしさのみぞ、せんかたなき。
ひとしづまりてのちながのすさびに、なんとなき具足ぐそくとりしたため、「のこかじ」とおも反古ほごなど、やぶつるなかに、ひと手習てならひ、絵描えかきすさびたる、見出みいでたるこそ、ただそのをり心地ここちすれ。
このごろあるひとふみだに、ひさしくなりて、「いかなるおり、いつのとしなりけん」とおもふは、あはれなるぞかし。なれし具足ぐそくなども、こころもなくて、か</わらずひさしき。いとかなし。