古文で読みたい

古典を読みたい人が、古典にアクセスするための本です

徒然草027|御国譲りの節会行はれて、剣璽、内侍所渡し奉らるるほどこそ

真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。

💭ポイント

天皇の譲位の儀式の寂しさと、位を降りた院に人が訪れなくなる世の移ろいを描く。こうした時にこそ、人の真心がわかるものだと説いています。

徒然草絵抄』(小泉吉永所蔵) 出典: 国書データベース

🌙現代語対訳

天皇が位を譲られる「御国譲り」の儀式が執り行われ、

御国譲みくにゆづりの節会せちえおこなはれて、

三種の神器である草薙剣と勾玉と八咫鏡が、新しい天皇へ渡される瞬間は、

剣璽けんじ内侍所ないしどころわたたてまつらるるほどこそ、

この上なくもの寂しい気持ちになります。

かぎりなう心細こころぼそけれ。

位を譲られたばかりの新院が、譲位された翌年の春に詠まれたという歌があります。

新院しんゐんのおりさせたまひてのはるませたまひけるとかや。

宮殿を守る役人たちも、他人事のように扱い、

殿守とのもりのとものみやつこよそにして

掃き清めなくなったこの庭に、桜の花が散り敷いていることだ。

はらはぬにわはなりしく

新しい御代の慌ただしさに紛れて、

いまの、ことしげきにまぎれて、

院の御所には誰も参上しなくなるのは、なんとも寂しい光景です。

ゐんにはまゐひともなきぞ、さびしげなる。

このような時にこそ、人の心は現れるものなのでしょう。

かかるおりにぞ、ひとのこころもあらはれぬべき。

📚古文全文

御国譲みくにゆづりの節会せちえおこなはれて、剣璽けんじ内侍所ないしどころわたたてまつらるるほどこそ、かぎりなう心細こころぼそけれ。

新院しんゐんのおりさせたまひてのはるませたまひけるとかや。

殿守とのもりのとものみやつこよそにしてはらはぬにわはなりしく

いまの、ことしげきにまぎれて、ゐんにはまゐひともなきぞ、さびしげなる。かかるおりにぞ、ひとのこころもあらはれぬべき。