真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。
💭ポイント
天皇の譲位の儀式の寂しさと、位を降りた院に人が訪れなくなる世の移ろいを描く。こうした時にこそ、人の真心がわかるものだと説いています。

🌙現代語対訳
天皇が位を譲られる「御国譲り」の儀式が執り行われ、
御国譲りの節会行はれて、
三種の神器である草薙剣と勾玉と八咫鏡が、新しい天皇へ渡される瞬間は、
剣璽、内侍所渡し奉らるるほどこそ、
この上なくもの寂しい気持ちになります。
かぎりなう心細けれ。
位を譲られたばかりの新院が、譲位された翌年の春に詠まれたという歌があります。
新院のおりさせ給ひての春、詠ませ給ひけるとかや。
宮殿を守る役人たちも、他人事のように扱い、
殿守のとものみやつこよそにして
掃き清めなくなったこの庭に、桜の花が散り敷いていることだ。
はらはぬ庭に花ぞ散りしく
新しい御代の慌ただしさに紛れて、
今の世の、ことしげきにまぎれて、
院の御所には誰も参上しなくなるのは、なんとも寂しい光景です。
院には参る人もなきぞ、さびしげなる。
このような時にこそ、人の心は現れるものなのでしょう。
かかる折にぞ、人のこころもあらはれぬべき。
📚古文全文
御国譲りの節会行はれて、剣璽、内侍所渡し奉らるるほどこそ、かぎりなう心細けれ。
新院のおりさせ給ひての春、詠ませ給ひけるとかや。
殿守のとものみやつこよそにしてはらはぬ庭に花ぞ散りしく
今の世の、ことしげきにまぎれて、院には参る人もなきぞ、さびしげなる。かかる折にぞ、人のこころもあらはれぬべき。