古文で読みたい

古典を読みたい人が、古典にアクセスするための本です

徒然草026|風も吹きあへずうつろふ人の心の花に・・・

真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。

💭ポイント

人の心の移ろいやすさは、亡き人との別れよりも悲しい。親しかった人との関係が失われてゆく寂しさを、古歌を引用しながら表現しています。

徒然草絵抄』(小泉吉永所蔵) 出典: 国書データベース

🌙現代語対訳

人の心は、風が吹くやいなや、色褪せてしまう花のようです。

かぜきあへずうつろふひとこころはなに、

親しく過ごした年月を思うと、

れにし年月としつきおもへば、

心に染みた言葉の一つ一つは忘れられないのに、

あはれときしことごとにわすれぬものから、

自分とは無関係な人になっていってしまうという現実。

わがほかになりゆくならひこそ、

亡くなった人との別れよりも、もっと悲しいことのように思えます。

ひとわかれよりもまさりて、かなしきものなれ。

だからこそ、白い糸が様々な色に染まってしまうことに例えて悲しんだり、

されば、しろいとまんことをかなしび、

道がいくつにも分かれていることに例えて嘆いたりした人もいたのでしょう。

みちのちまたのかれんことをなげひともありけんかし。

堀川天皇のとき16名の歌人が詠んだ百首の和歌の中に、こんな歌があります。

堀川院ほりかわゐん百首ひゃくしゅうたなかに、

昔、愛しく思っていた人の家の垣根は、荒れ果ててしまった。

昔見むかしみいも垣根かきねれにけり

雑草であるチガヤに混じって、スミレが咲いているだけだ。

つばなまじりのすみれのみして

なんとも寂しい情景です。

さびしき気色けしき

作者もこのような経験をしたのでしょう。

さることはべりけん。

📚古文全文

かぜきあへずうつろふひとこころはなに、れにし年月としつきおもへば、あはれときしことごとにわすれぬものから、わがほかになりゆくならひこそ、ひとわかれよりもまさりて、かなしきものなれ。
されば、しろいとまんことをかなしび、みちのちまたのかれんことをなげひともありけんかし。
堀川院ほりかわゐん百首ひゃくしゅうたなかに、
昔見むかしみいも垣根かきねれにけりつばなまじりのすみれのみして
さびしき気色けしき、さることはべりけん。