古文で読みたい

古典を読みたい人が、古典にアクセスするための本です

徒然草022|何事も古き世のみぞしたはしき・・・

真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。

💭ポイント

何事も古い時代のものこそ趣深い。特に言葉遣いは、現代になるにつれ品がなくなり嘆かわしいと、ある古人は語る。

🌙現代語対訳

何事につけても、心惹かれるのは古い時代のものばかりです。

何事なにごとふるのみぞしたはしき。

今の時代の流行というものは、品がなくなっていくように思えます。

今様いまやう無下むげにいやしくこそ、なりゆくめれ。

例えば、木工職人が作った、美しい器も、

かのみちたくみつくれる、うつくしき器物うつはものも、

やはり古い時代の様式で作られたものこそ、趣深く見えるものです。

古代こだい姿すがたこそ、をかしとゆれ。

手紙の言葉にしても、昔の人の書き損じでさえ、素晴らしいものです。

ふみことばなどぞ、むかし反古ほごどもはいみじき。

日常で話す言葉も、だんだんと嘆かわしいものになっていきます。

ただ言葉ことばも、口惜くちをしうこそなりもてゆくなれ。

「昔は『牛車準備』、『灯火点灯』と言っていたが、

いにしへは、『くるまもたげよ』、『かかげよ』とこそひしを、

今の若い者は、『準備して』『点灯して』などと言う。

今様いまやうひとは、『もてあげよ』、『かきあげよ』とふ。

また、『総務部照明チーム、要員配置』と言うべきところを、

主殿寮とのもりょう人数にんじゅだて』とふべきを、

『照明を立てて、明るくして』と言い、

『たちあかし、しろくせよ』とひ、

宮中で天下泰平を祈る最勝講をお聞きになる場所を、『御講の盧(ごこうのろ)』と言ったのに、

最勝講さいしょうこう聴聞みちょうもんじょなるをば、『ごかうのろ』とこそふを、

今は『講盧(こうろ)』と言う。嘆かわしい」と、古い時代の人は仰っていました。

『かうろ』とふ。口惜くちをし」とぞ、ふるひとおおせられし。

📚古文全文

何事なにごとふるのみぞしたはしき。今様いまやう無下むげにいやしくこそ、なりゆくめれ。
かのみちたくみつくれる、うつくしき器物うつはものも、古代こだい姿すがたこそ、をかしとゆれ。
ふみことばなどぞ、むかし反古ほごどもはいみじき。ただ言葉ことばも、口惜くちをしうこそなりもてゆくなれ。「いにしへは、『くるまもたげよ』、『かかげよ』とこそひしを、今様いまやうひとは、『もてあげよ』、『かきあげよ』とふ。『主殿寮とのもりょう人数にんずだて』とふべきを、『たちあかし、しろくせよ』とひ、最勝講さいしょうこう聴聞みちょうもんじょなるをば、『ごかうのろ』とこそふを、『かうろ』とふ。口惜くちをし」とぞ、ふるひとおおせられし。