真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。
💭ポイント
何事も古い時代のものこそ趣深い。特に言葉遣いは、現代になるにつれ品がなくなり嘆かわしいと、ある古人は語る。
🌙現代語対訳
何事につけても、心惹かれるのは古い時代のものばかりです。
何事も古き世のみぞしたはしき。
今の時代の流行というものは、品がなくなっていくように思えます。
今様は無下にいやしくこそ、なりゆくめれ。
例えば、木工職人が作った、美しい器も、
かの木の道の匠の作れる、美しき器物も、
やはり古い時代の様式で作られたものこそ、趣深く見えるものです。
古代の姿こそ、をかしと見ゆれ。
手紙の言葉にしても、昔の人の書き損じでさえ、素晴らしいものです。
文の詞などぞ、昔の反古どもはいみじき。
日常で話す言葉も、だんだんと嘆かわしいものになっていきます。
ただ言ふ言葉も、口惜しうこそなりもてゆくなれ。
「昔は『牛車準備』、『灯火点灯』と言っていたが、
「いにしへは、『車もたげよ』、『火かかげよ』とこそ言ひしを、
今の若い者は、『準備して』『点灯して』などと言う。
今様の人は、『もてあげよ』、『かきあげよ』と言ふ。
また、『総務部照明チーム、要員配置』と言うべきところを、
『主殿寮、人数だて』と言ふべきを、
『照明を立てて、明るくして』と言い、
『たちあかし、しろくせよ』と言ひ、
宮中で天下泰平を祈る最勝講をお聞きになる場所を、『御講の盧(ごこうのろ)』と言ったのに、
最勝講御聴聞所なるをば、『ごかうのろ』とこそ言ふを、
今は『講盧(こうろ)』と言う。嘆かわしい」と、古い時代の人は仰っていました。
『かうろ』と言ふ。口惜し」とぞ、古き人は仰せられし。
📚古文全文
何事も古き世のみぞしたはしき。今様は無下にいやしくこそ、なりゆくめれ。
かの木の道の匠の作れる、美しき器物も、古代の姿こそ、をかしと見ゆれ。
文の詞などぞ、昔の反古どもはいみじき。ただ言ふ言葉も、口惜しうこそなりもてゆくなれ。「いにしへは、『車もたげよ』、『火かかげよ』とこそ言ひしを、今様の人は、『もてあげよ』、『かきあげよ』と言ふ。『主殿寮、人数だて』と言ふべきを、『たちあかし、しろくせよ』と言ひ、最勝講御聴聞所なるをば、『ごかうのろ』とこそ言ふを、『かうろ』と言ふ。口惜し」とぞ、古き人は仰せられし。