真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。
💭ポイント
質素で無欲な生き方こそ最も素晴らしい。財産を持たない清貧な生き方をした賢人たちの清々しい境地は、言葉で語り尽くせない。

🌙現代語対訳
人は、自らの生活を質素にし、贅沢を避け、
人は、おのれをつづまやかにし、奢りを退けて、
財産を持たず、地位や名声を欲しがらないのが、最も素晴らしいでしょう。
財を持たず、世をむさぼらざらんぞ、いみじかるべき。
昔から、賢い人でお金持ちだった人はめったにいません。
昔より、賢き人の富めるはまれなり。
昔、中国に許由という人がいました。
唐土に許由と言ひつる人は、
彼は持ち物を全く持たず、
さらに身にしたがへる貯へもなくて、
水を手ですくって飲んでいました。
水をも手してささげて飲みけるを見て、
それを見かねた人が「ひょうたん」を与えたところ、
なり瓢といふ物を、人の得させたりければ、
ある時、木の枝にかけていたところ、
ある時、木の枝にかけたりけるが、
風で鳴るのが、やかましいと言って捨ててしまいました。
風に吹かれて鳴りけるを、「かしかまし」とて捨てつ。
また手にすくって水を飲むようになったといいます。
また、手にむすびてぞ、水も飲みける。
その心の中は、どれほど清々しかったことでしょうか。
いかばかり、心のうち、凉しかりけん。
また、孫晨という人は、冬だというのに寝具もなく、藁の束が一つあるきりで、
孫晨は、冬月に衾なくて、藁一束ありけるを、
夜はそれに寝て、朝には片付けていたということです。
夕べにはこれに臥し、朝には納めけり。
中国の人がこれを素晴らしいと思ったからこそ、
唐土の人は、これをいみじと思へばこそ、
書き残して後世に伝えたのでしょう。
記し留めて、世にも伝へけめ。
これらの人は(名声を求めていないのだから)、語り伝えるべきではないでしょう。
これらの人は、語りも伝ふべからず。
📚古文全文
人は、おのれをつづまやかにし、奢りを退けて、財を持たず、世をむさぼらざらんぞ、いみじかるべき。昔より、賢き人の富めるはまれなり。
唐土に許由と言ひつる人は、さらに身にしたがへる貯へもなくて、水をも手してささげて飲みけるを見て、なり瓢といふ物を、人の得させたりければ、ある時、木の枝にかけたりけるが、風に吹かれて鳴りけるを、「かしかまし」とて捨</てつ。また、手にむすびてぞ、水も飲みける。いかばかり、心のうち、凉しかりけん。
孫晨は、冬月に衾なくて、藁一束ありけるを、夕べにはこれに臥し、朝には納めけり。
唐土の人は、これをいみじと思へばこそ、記し留めて、世にも伝へけめ。これらの人は、語りも伝ふべからず。