古文で読みたい

古典を読みたい人が、古典にアクセスするための本です

徒然草018|人は、おのれをつづまやかにし・・・

真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。

💭ポイント

質素で無欲な生き方こそ最も素晴らしい。財産を持たない清貧な生き方をした賢人たちの清々しい境地は、言葉で語り尽くせない。

徒然草絵抄』(小泉吉永所蔵) 出典: 国書データベース

🌙現代語対訳

人は、自らの生活を質素にし、贅沢を避け、

ひとは、おのれをつづまやかにし、おごりを退しりぞけて、

財産を持たず、地位や名声を欲しがらないのが、最も素晴らしいでしょう。

たからたず、をむさぼらざらんぞ、いみじかるべき。

昔から、賢い人でお金持ちだった人はめったにいません。

むかしより、かしこひとめるはまれなり。

昔、中国に許由という人がいました。

唐土もろこし許由きょゆうひつるひとは、

彼は持ち物を全く持たず、

さらににしたがへるたくはへもなくて、

水を手ですくって飲んでいました。

みづをもしてささげてみけるをて、

それを見かねた人が「ひょうたん」を与えたところ、

なりひさこといふものを、ひとさせたりければ、

ある時、木の枝にかけていたところ、

あるときえだにかけたりけるが、

風で鳴るのが、やかましいと言って捨ててしまいました。

かぜかれてりけるを、「かしかまし」とててつ。

また手にすくって水を飲むようになったといいます。

また、にむすびてぞ、みづみける。

その心の中は、どれほど清々しかったことでしょうか。

いかばかり、こころのうち、すずしかりけん。

また、孫晨という人は、冬だというのに寝具もなく、藁の束が一つあるきりで、

孫晨そんしんは、冬月ふゆづきふすまなくて、わら一束ひとたばありけるを、

夜はそれに寝て、朝には片付けていたということです。

ゆうべにはこれにし、あしたにはおさめけり。

中国の人がこれを素晴らしいと思ったからこそ、

唐土もろこしひとは、これをいみじとおもへばこそ、

書き残して後世に伝えたのでしょう。

しるとどめて、にもつたへけめ。

これらの人は(名声を求めていないのだから)、語り伝えるべきではないでしょう。

これらのひとは、かたりもつたふべからず。

📚古文全文

ひとは、おのれをつづまやかにし、おごりを退しりぞけて、たからたず、をむさぼらざらんぞ、いみじかるべき。むかしより、かしこひとめるはまれなり。
唐土もろこし許由きょゆうひつるひとは、さらににしたがへるたくはへもなくて、みづをもしてささげてみけるをて、なりひさこといふものを、ひとさせたりければ、あるときえだにかけたりけるが、かぜかれてりけるを、「かしかまし」とて</てつ。また、にむすびてぞ、みづみける。いかばかり、こころのうち、すずしかりけん。
孫晨そんしんは、冬月ふゆづきふすまなくて、わら一束ひとたばありけるを、ゆうべにはこれにし、あしたにはおさめけり。
唐土もろこしひとは、これをいみじとおもへばこそ、しるとどめて、にもつたへけめ。これらのひとは、かたりもつたふべからず。