真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。
💭ポイント
人の心を最も惑わすものは色欲。香にもときめき、久米の仙人のように、清らかな肌の魅力に抗えないのも当然。

🌙現代語対訳
人の心を惑わすものの中で、色欲に勝るものはありません。
世の人の心まどはすこと、色欲にはしかず。
人間の心とは、なんと愚かなものでしょう。
人の心はおろかなるものかな。
香の匂いなど仮初めのもので、一時的に衣服に焚きしめたものと分かっていながら、
匂ひなどは仮のものなるに、「しばらく衣裳に薫き物す」と知りながら、
素晴らしい香りがすると、必ず心がときめいてしまうのです。
えならぬ匂ひには、必ず心どきめきするものなり。
あの久米の仙人が、洗濯をしている女性のふくらはぎの白さを見て、
久米の仙人の、物洗ふ女の脛の白きを見て、
神通力を失ってしまったというのも、もっともな話です。
通を失ひけんは、まことに、
手や足、肌などが清らかで、健康的につややかに潤っている魅力は、
手・足・肌などの清らに、肥えあぶらづきたらんは、
香りのようなものとは違いますから、無理もないことでしょう。
ほかの色ならねば、さもあらんかし。
📚古文全文
世の人の心まどはすこと、色欲にはしかず。
人の心はおろかなるものかな。匂ひなどは仮のものなるに、「しばらく衣裳に薫き物す」と知りながら、えならぬ匂ひには、必ず心どきめきするものなり。久米の仙人の、物洗ふ女の脛の白きを見て、通を失ひけんは、まことに、手・足・肌などの清らに、肥えあぶらづきたらんは、ほかの色ならねば、さもあらんかし。