古文で読みたい

古典を読みたい人が、古典にアクセスするための本です

徒然草008|世の人の心まどはすこと・・・

真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。

💭ポイント

人の心を最も惑わすものは色欲。香にもときめき、久米の仙人のように、清らかな肌の魅力に抗えないのも当然。

徒然草絵抄』(小泉吉永所蔵) 出典: 国書データベース

🌙現代語対訳

人の心を惑わすものの中で、色欲に勝るものはありません。

ひとこころまどはすこと、色欲しきよくにはしかず。

人間の心とは、なんと愚かなものでしょう。

ひとこころはおろかなるものかな。

香の匂いなど仮初めのもので、一時的に衣服に焚きしめたものと分かっていながら、

におひなどはかりのものなるに、「しばらく衣裳いしょうものす」とりながら、

素晴らしい香りがすると、必ず心がときめいてしまうのです。

えならぬにおひには、かならこころどきめきするものなり。

あの久米の仙人が、洗濯をしている女性のふくらはぎの白さを見て、

久米くめ仙人せんにんの、ものあらおんなはぎしろきをて、

神通力を失ってしまったというのも、もっともな話です。

つううしなひけんは、まことに、

手や足、肌などが清らかで、健康的につややかに潤っている魅力は、

あしはだへなどのきよらに、えあぶらづきたらんは、

香りのようなものとは違いますから、無理もないことでしょう。

ほかのいろならねば、さもあらんかし。

📚古文全文

ひとこころまどはすこと、色欲しきよくにはしかず。
ひとこころはおろかなるものかな。におひなどはかりのものなるに、「しばらく衣裳いしょうものす」とりながら、えならぬにおひには、かならこころどきめきするものなり。久米くめ仙人せんにんの、ものあらおんなはぎしろきをて、つううしなひけんは、まことに、あしはだへなどのきよらに、えあぶらづきたらんは、ほかのいろならねば、さもあらんかし。