古文で読みたい

古典を読みたい人が、古典にアクセスするための本です

徒然草006|わが身のやんごとなからんにも・・・

真の古典の魅力は、作者が紡いだ原文の中にこそ息づいています。「古文で読みたい徒然草シリーズ」で、現代語と古文を併読することで、古の言葉が今なお放つ光を確かめてください。

💭ポイント

身分に関わらず子はいない方が良いとし、高貴な人々が子孫の断絶を願った例をあげています。隠遁生活の兼好は「落ちぶれた子孫」のひとりかもしれない。

徒然草絵抄』(小泉吉永所蔵) 出典: 国書データベース

🌙現代語対訳

自分の身分が高い場合はもちろん、

わがのやんごとなからんにも、

ましてや取るに足らない低い身分であればなおさらのこと、

まして、かずならざらんにも、

子供というものはいないほうが良いでしょう。

といふもの、くてありなん。

昔、兼明親王や九条太政大臣、花園左大臣といった高貴な方々は、

前中書王さきのちゅうしょおう九条太政大臣くじょうのだじょうだいじん花園左大臣はなぞののさだいじん

みな自分の一族が途絶えることを願われたといいます。

みなぞうえんことをねがたまへり。

染殿大臣も「子孫がいないのは良いことです。

染殿大臣そめどのおとども、「子孫しそんおはさぬぞ、はべる。

自分の死後に子孫が落ちぶれていくのは、つらいことですから」と、

すゑのおくれたまへるは、わろきことなり」とぞ、

大鏡』の中で語られています。

世継よつぎおきな物語ものがたりにはへる。

また、聖徳太子が生前にご自分のお墓を造らせた時も、

聖徳太子しょうとくたいしの、御墓おんはかをかねてかせたまひけるときも、

「(墓の設計で)ここを切り、あそこを断つのは、

「ここをれ、かしこをて。

私が子孫を持たないようにと願っているからだ」とおっしゃったと伝えられています。

子孫しそんあらせじとおもふなり」とはべりけるとかや。

📚古文全文

わがのやんごとなからんにも、まして、かずならざらんにも、といふもの、くてありなん。

前中書王さきのちゅうしょおう九条太政大臣くじょうのだじょうだいじん花園左大臣はなぞののさだいじん、みなぞうえんことをねがたまへり。染殿大臣そめどのおとども、「子孫しそんおはさぬぞ、はべる。すゑのおくれたまへるは、わろきことなり」とぞ、世継よつぎおきな物語ものがたりにはへる。

聖徳太子しょうとくたいしの、御墓おんはかをかねてかせたまひけるときも、「ここをれ、かしこをて。子孫しそんあらせじとおもふなり」とはべりけるとかや。